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第154話

ずっと自分が嫌いだった。 何も無い自分が凄く惨めで不安で、親の庇護がなければこの先も生きていけないのではないかと怖かった。 初めて語った醜い自分の本当の気持ち。 それを秀一は静かに聞いていた。 「俺、ほんと、嫌な奴………」 膝の上で握った拳に涙がぽつりぽつりと零れ落ちる。 それを見ていた秀一は希一を自分の胸に引き寄せた。 「父さん……?」 「お前は……何でも一人で抱え込んでしまう、悪い癖だ。 もっと話を聞いてやるべきだったな。 すまない……」 「そんな……」 希一は素直でいい子に育った。 我が儘もあまり言わない、本当に手のかからない子だった。 それはとても素晴らしい事だがこの子の場合はいい子過ぎる。 心配かけまいと我慢して我慢して、気づいた時にはコップ一杯に溜まった水は溢れ出し本人はボロボロの状態。 こうなるまで気付かない自分に腹が立つ。 「どうせ言っても頼ってはくれないのだろうがな。 そうだな、言い方を変えよう。 もっと迷惑を掛けろ」 「え?」 「俺はお前が一人で抱え込む方がツラい。 どんな些細なことでも話してくれた方が嬉しい。 それは朔だって同じだ。 我慢するんじゃなくて今みたいに弱音を吐いて欲しい」 「……っ!!」 秀一のその願いは希一の心にぐさりと刺さる。 両親に迷惑とか心配とかかけないようにと今まで過ごしてきたのに父は迷惑を掛けろと言うのだから。 どうしたらいいか分からなくなる。

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