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第155話
もっと迷惑掛けろと言う父に希一はどう反応すればいいのか分からなかった。
そんな心情を察した秀一は苦笑いを浮かべる。
「あまり深く考える必要は無い。
ただ、今日はこんなことがあったと軽く話してくれるだけでいい」
「……分かった」
そう、こたえると秀一は希一の頭を撫でた。
「まぁ、無いと思うが九条碧と何かあったときはすぐに言え。
俺はいつだってお前の味方だからな。
言うのが難しいのであれば陽介君に相談すればいい。
頼むから一人で抱え込むのは止めろ」
「うん、ありがと」
切実な秀一の訴えに自分は親に恵まれたなぁと思った。
これだけ自分の事を想ってくれる。
改めて親に感謝した。
そうしている内に寮に着いた。
久々に父と話して普段言えない事も話せたし、それもこれも機会を作ってくれた碧のお陰だ。
「じゃあな希一。
何かあったら連絡しろ」
「うん、じゃあまたね」
「碧君も、希一を頼む。
今度君ともゆっくり話したい」
「はい、勿論!!
今日はありがとうございました。
また日を改めてお伺いさせて頂きます」
父を碧と見送り希一は彼と手を繋いで寮に戻った。
そして希一を送り家に帰った秀一は朔に出迎えられる。
「お帰り、遅かったね」
「ああ、お前に報告しなければいけないな」
「??」
まだ希一の事は知らない朔にパーティーでの事を彼に話すととても驚いていたが嬉しそうに微笑んだ。
「そっか、あの子が…ね………」
彼もまた少し寂しげな表情を浮かべるも安堵の方が大きいようでほっとため息を一つついた。
Ωと言うことで沢山嫌な思いをしてきていて、朔としても責任を感じていたから希一が今、幸せな事に心底安心した。
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