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第29話
陽介が希一を連れて一旦教室から出ようとするとクラスメートの一人が二人を引き留める。
「そう言や、お前もいたよな村瀬。
なんで会長がαでもないお前らと食事するんだよ?
特にΩなんかと……」
昨日のことを指摘されて眉を顰める陽介。
しかも彼はΩなんかと言った。
「そりゃ、希一が可愛いからだろうな。
それにお前と違って努力家で謙虚で優しくて……
会長もそういうところを見てるんだろう。」
「なんだと?」
「違うのか?
じゃあ反論してみろよ。
お前が希一より優れてるところってなんだ?」
「陽介もう止めて。
大丈夫だから、ほら、行こう?」
この場の雰囲気が悪くなりこのままではまずいと思って陽介の背中を押してここから連れ出す。
「ごめん陽介俺のせいで……」
「なんでお前が謝るんだよ。
どう考えてもあっちが悪い。」
ふてくされたように不満を言う陽介を宥めながら落ち着いてと諭す。
「はぁ、まったくお前は……」
希一は何を言われても言い返さないし相手の悪口も言わない。
それは多分自分を過小評価しているからと言うのも一つの要因だと思う。
九条家に生まれたΩと言うことで色んなプレッシャーやコンプレックスがあるのだろう。
それでも彼は勉強もできるし行動の一つ一つに育ちの良さを感じる。
それに容姿も流石あの父親だけあって美しい。
何も恥じることなんてないのにすごくもったいないと陽介は思った。
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