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第62話
ぬいぐるみと一緒に寝ているという希一を
想像して顔が赤くなる
そしてそんなにぬいぐるみが好きなら
今度希一が気に入りそうなものを送ろうと思った
「碧さん大したものじゃないですが
どうぞ、召し上がってください」
「ああ、頂く」
カレーの香ばしい匂いが食欲をそそる
そっとスプーンで掬って口に含む
「美味い……」
「本当ですか?良かった
お口に合わなかったらどうしようかと」
確かにこれは陽介が言ったように美味しい
だがプロが作るのと何か違う
何だろうか……
「なんか希一様の作るカレーは
温かみのある優しい家庭の味ですね」
雫が味の感想を言った
「そうですね
料理は母に教わりました
母は体が弱くできることが少ないからと
せめて料理で恩返しがしたいと言ってました
それで俺も手伝うようになって
多少は母の味に近づいたかなあと」
その言葉に碧はそういうことかと
納得した
自分がいつも食べているのはプロの味
それに母は一切料理をしないから
母の味というものは知らない
だからか、凄く羨ましいと感じた
どんな凄いプロが作った料理でも
愛しい人の家庭の味には敵わないのだと知った
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