87 / 168
第87話
怖い……
他人に恐怖を感じる。
「希一君大丈夫?
何だか顔色が悪いけど」
「だ、大丈夫です」
「そう?じゃあ続けるね。
それで、ここなんだけど……」
なんとか平静を装って勉強を進める。
でもあまり頭に入ってこない。
だから何度もミスをしてその度にすみませんと謝って……
自分はどうしてしまったのだろう。
「……君、希一君」
「はい」
いけない……
ぼーっとしてしまっていた。
「具合悪そうだね顔色が良くないし、今日はこのくらいにしとこうか」
「え……あの……」
何か言おうとしたが言葉に詰まって上手く発せない。
その間に先生は片付けてまた今度ねと部屋を出ていってしまった。
こんなはずじゃなかったのに……
人が怖い……
部屋を出た先生はリビングにいる朔に挨拶をする。
「すみません、希一君具合悪そうなので今日はもう止めた方がいいのかと」
「え?ああ、そうですか……
すみません、お手数をお掛けしてしまって」
「いえ、構いませんよ」
そう言って彼はこの家を後にした。
ともだちにシェアしよう!