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第87話

怖い…… 他人に恐怖を感じる。 「希一君大丈夫? 何だか顔色が悪いけど」 「だ、大丈夫です」 「そう?じゃあ続けるね。 それで、ここなんだけど……」 なんとか平静を装って勉強を進める。 でもあまり頭に入ってこない。 だから何度もミスをしてその度にすみませんと謝って…… 自分はどうしてしまったのだろう。 「……君、希一君」 「はい」 いけない…… ぼーっとしてしまっていた。 「具合悪そうだね顔色が良くないし、今日はこのくらいにしとこうか」 「え……あの……」 何か言おうとしたが言葉に詰まって上手く発せない。 その間に先生は片付けてまた今度ねと部屋を出ていってしまった。 こんなはずじゃなかったのに…… 人が怖い…… 部屋を出た先生はリビングにいる朔に挨拶をする。 「すみません、希一君具合悪そうなので今日はもう止めた方がいいのかと」 「え?ああ、そうですか…… すみません、お手数をお掛けしてしまって」 「いえ、構いませんよ」 そう言って彼はこの家を後にした。

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