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第107話
陽介の父はとある企業の社長だった。
優しい父、綺麗な母、少し生意気だけど大切な妹の茉莉。
そんな家族に囲まれて裕福で何不自由ない生活。
理想の生活だった。
けれどそれがある日突然崩れ去ってしまったのだ。
父は嘘がつけなくて優しすぎる性格だ。
それは誇るべき事なのかもしれないが、逆に仇となる事もあるのだ。
その性格故騙されて会社は倒産。
更に借金まで抱えることになってしまった。
母は毎日不満を父にぶつけ怒鳴る。
それに父はひたすら謝り続ける。
当時まだ8歳だった陽介達子供は辛いものだった。
裕福な生活を失い何もかもが変わって狭い家に安い食べ物。
父も早朝から夜遅くまで働き詰めの日々。
「ごめんな………」
切なく陽介の頭を撫でる父の手が今でも忘れられない。
そんな生活が半年経った頃だった。
母が出ていった。
お金を持った男と不倫し子供二人を置いて出ていってしまったのだ。
元々母もαで裕福な暮らしをしていたからこの現状に耐えられなかったようだ。
子供よりも男と金を選んだ母。
この現実を目の当たりにして陽介は自分の存在意義が分からなくなってしまった。
母にとって自分はその程度の存在なのかと愕然とした。
こんな自分が惨めで悔しくて、そんな中10歳の時更に追い打ちをかける出来事が起こった。
父が過労で倒れたのだ。
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