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第108話

授業中父が倒れたと連絡が入った。 茉莉と共に先生に連れられて急いで病院へやってきた。 病室では父が静かに眠っている。 医者の話では暫くの入院が必要とのこと。 そしてその間陽介と茉莉はどうするのかと言う話になった。 父が倒れたというだけでも不安なのにこれからどうなるのかという不安。 それは妹も同じこと。 「茉莉心配するな。 俺が一緒にいるから」 「うん」 自分がしっかりしなければ…… 父にもこれ以上心配かけたくない。 陽介は気丈に振舞った。 結局二人は父が退院するまで友達の家に世話になることになった。 友達の家族はとても良くしてくれたが人の家に世話になるのは居心地が悪かった。 父が退院してまた一緒に暮らし始めたが現状は変わらず…… それどころか父がドクターストップで、あまり長時間働くのはよくないと仕事をセーブしたせいで生活はますます苦しくなっていた。 そんな時に現れた一人の男性。 その人を見た瞬間に目を奪われた。 今まで見たことがないくらい美しい男性で黒髪に切れ長の目が印象的だった。 思わず見とれていると男性がふっと笑って話しかけてきた。 「初めまして、九条秀一といいます」 「九条……?」 陽介でも知っていた九条と言う名前。 すると父がそうだよと、あの九条家の人だよと紹介してくれた。

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