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第109話
あの九条家の人がどうして自分の前にいるのだろう?
そう思っていると父が挨拶しなさいと促してきた。
「む、村瀬陽介です……」
「妹の茉莉です」
「陽介君と茉莉ちゃん。
礼儀正しくていい子ですね」
そう秀一に言われた父は謙遜しながらもありがとうございますとお礼を言う。
「二人とも聞いてくれ。
お父さんが九条さんの会社で働けるようしてくれて借金も肩代わりして下さった。
これで生活も楽になる。
お前たちもお礼を言いなさい」
「本当に?
あ、ありがとうございます」
なんと秀一が自分の会社で雇ってくれる上に多額の借金も全て払ってくれたらしい。
けれどどうして彼は自分たちを助けてくれたのか?
「お礼なんて不要ですよ。
貴殿は以前うちの取り引きの際いろいろとご尽力下さいましたし、何より貴殿のその優秀な才能がほしいだけですよ。
それにこの子達はうちの息子と同い年ですので、何かしてあげられないかというただの私のエゴです」
え?この人自分と同い年の息子がいるのかと驚く。
だってとても10歳の子供がいるようには見えないほど若々しい。
その後生活も以前とは同じとまでは行かなくとも楽になり、秀一もたまに陽介達の様子を伺うこともあった。
何もかも完璧で非の打ちどころがないような人。
そんな秀一に憧れ彼のために何かしたいと思うようになった。
彼のためならどんなことでもしたいと……
すると中学3年生になってそろそろ受験について本気で考えるようになった頃だった。
秀一からとあるお願いをされた。
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