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第115話
不機嫌な碧に雫はこんなことを言った。
「でも午後からは碧様借り物競争出るんでしょう?
希一様にいいところを見せるチャンスじゃないですか」
「…………まぁ、やれるとこまではやるが」
希一の名を出せば簡単に考えを変える。
単純で扱いやすい人だ。
そして昼食も終わり馬術部の演技から後半が始まり、すぐに碧の出る借り物競争が行われる。
そして碧はスタートの位置に立つ。
そのとき不意に希一の頑張れと言う声がした気がした。
周りを見渡すと応援席に彼の姿があった。
すると目が合って自分に手を振ってくれていた。
面倒だと思ってた体育祭だが、こんなものも悪くはないと思った。
が、そんな考えは直ぐに消える。
パンッと言う発砲音と共に走り出し、借り物競争の内容が書かれた髪を手にして固まった。
"大切なあの娘"
「………」
これはなんだ?
この大切とはつまり好きな子と言う意味なのか?
こんなもの公開処刑ではないか。
「あれ、碧さんどうしたんだろ?」
「さぁ?何か変な内容のやつに当たったんじゃね?」
陽介の言う通り碧はどうしようか迷っていた。
大切と言うと希一以外にはいない。
このまま彼を連れて行って恋人だとバレるのかと。
いや、大丈夫だ。
言い訳をすればいいだけだ。
そして碧は希一の元へと走っていった。
「碧さん?」
「僕と来い」
そう言ってやや強引に希一の手を引っ張った。
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