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15 入社一年目12月。
『じゃぁ行くか。』
小宮さんに言われ廊下を歩く。
こんな広いホテルに来たことなんてない。
大広間に入ると、そこは人で溢れ返っていた。
立食パーティーのようで、自分で飲み物や食べ物を取るスタイルらしい。
『なんか食べたい物ある?』
『な、なんでも…』
『OK。俺適当に取ってくるわ。』
『じゃ…じゃぁ俺、飲み物取って来ます!!何飲みますか?』
『ビールで。』
『はい!!』
小宮さんのスマートさには脱帽する。
初めて駅で女性を助けているのを見たときにも思ったけど、何もかもがさりげないんだよな…
ビールを両手に持ち、元の場所に戻ると小宮さんが待っていた。
『おう。サンキュ。』
お皿とグラスを一つずつ交換し、近くのテーブルに移動する。
『すごい人ですね…』
『そうだな…毎年入れ替わり激しいからな、この会社。辞めるやつも多いけど、新入社員も多い。』
『そうなんですか?』
『ノルマ厳しいからな…結構辞めていくやつ多いよ。全国的に。』
『なるほど。』
『でも、お前は頑張ってるよ。残業までして知識詰め込んで。』
そう言って頭をポンポンされた。
あっ…
あの時と同じだ。
小宮さんの手が触れた部分が熱い。
俺が頑張れたのは小宮さんのあの頭ポンポンがあったからで…
頭の中で考えながらボーッとしていた。
『山崎?お前、顔赤いけどもう酔ってんの?』
『えっ?』
頬を触ると本当に熱くて、今の小宮さんの行為でこうなったのだと、恥ずかしくなる。
『酒、弱いの?』
『いや!!弱くないですし、全然酔ってません!!!』
首をフルフルと横に振って考えていたことを吹き飛ばし、食べ物を口に運ぶ。
『うまっ!!これうまいっすね!!』
そう言って小宮さんを見るとクスクスと笑っていた。
『お前、子供みたいで可愛いな。』
そう言われ俺の頭はショートした。
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