15 / 147

15 入社一年目12月。

『じゃぁ行くか。』 小宮さんに言われ廊下を歩く。 こんな広いホテルに来たことなんてない。 大広間に入ると、そこは人で溢れ返っていた。 立食パーティーのようで、自分で飲み物や食べ物を取るスタイルらしい。 『なんか食べたい物ある?』 『な、なんでも…』 『OK。俺適当に取ってくるわ。』 『じゃ…じゃぁ俺、飲み物取って来ます!!何飲みますか?』 『ビールで。』 『はい!!』 小宮さんのスマートさには脱帽する。 初めて駅で女性を助けているのを見たときにも思ったけど、何もかもがさりげないんだよな… ビールを両手に持ち、元の場所に戻ると小宮さんが待っていた。 『おう。サンキュ。』 お皿とグラスを一つずつ交換し、近くのテーブルに移動する。 『すごい人ですね…』 『そうだな…毎年入れ替わり激しいからな、この会社。辞めるやつも多いけど、新入社員も多い。』 『そうなんですか?』 『ノルマ厳しいからな…結構辞めていくやつ多いよ。全国的に。』 『なるほど。』 『でも、お前は頑張ってるよ。残業までして知識詰め込んで。』 そう言って頭をポンポンされた。 あっ… あの時と同じだ。 小宮さんの手が触れた部分が熱い。 俺が頑張れたのは小宮さんのあの頭ポンポンがあったからで… 頭の中で考えながらボーッとしていた。 『山崎?お前、顔赤いけどもう酔ってんの?』 『えっ?』 頬を触ると本当に熱くて、今の小宮さんの行為でこうなったのだと、恥ずかしくなる。 『酒、弱いの?』 『いや!!弱くないですし、全然酔ってません!!!』 首をフルフルと横に振って考えていたことを吹き飛ばし、食べ物を口に運ぶ。 『うまっ!!これうまいっすね!!』 そう言って小宮さんを見るとクスクスと笑っていた。 『お前、子供みたいで可愛いな。』 そう言われ俺の頭はショートした。

ともだちにシェアしよう!