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22 入社一年目1月。
手に汗握るとはこのことだろうか…
さっきからマイクを握る手は汗でグッショリだ。
自分の番が回ってきてイントロが始まった。
小宮さんをチラッと見るとこちらを見ていた。
ヤバイ…緊張する。
歌は得意な方なのに、今日はどうしてこんなに緊張するんだろう?
あっ…
小宮さんの前だからだ…
好きな人の前で歌うということ自体が初めてで、緊張しているのだ。
そうとわかると益々緊張する。
初めて聴く俺の歌声はどんなものかとみんな耳をすましている。
ふぅーっと一度深呼吸して歌い出す。
〜♪
俺の歌声にオバ様達は聞き入り泣いていた。
いや、あんたたちに歌ってんじゃないんだ!!
小宮さんに歌ってんだ!!!
聴いてますか?小宮さん!!!
届いてますか?小宮さん!!!
選曲はバッチリ愛のバラード系をチョイスした。
俺のこの思いよ届け…
こんな重い男、俺なら嫌だな…
そう思いながらも心を込めて歌い上げ、終わるとオバ様達がキャーキャー叫んだ。
『お前すげぇな。』
天野さんに脇腹を肘で押される。
『あ、ありがとうございます。』
小宮さんの反応が気になる…
チラッと小宮さんを見ると、笑顔で拍手してくれた。
俺の気持ち届いたのかな…
そのあと、俺はオバ様達に捕まりリクエストされる曲を歌い続け、気付いた時には小宮さんは帰ってしまっていた。
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