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24 入社一年目2月。小宮side
『さみぃ〜。』
外は相変わらずの寒さで雪がチラついている。
この季節の営業は本当にツライ。
走って会社に入り、ロビーを歩く。
時間も時間なだけあって受付の女の子はもうおらず、人気も少ない。
事務所に着くと明かりが点いていた。
ラッキー、まだ誰かいる。
守衛さんに頼んで鍵を開けてもらうことになると予想していた俺は喜びながら事務所に入る。
あれ?誰もいないじゃん。
見渡すと誰の姿もなく不思議に思う。
自分のデスクに近付くと一つだけデスクのスタンドの灯りが点いていた。
山崎…
見ると机に伏せて眠る山崎の姿。
そっと近付く。
あの時新幹線の中で見たあどけない寝顔だ。
サラリと髪を撫でる。
コイツ本当頑張ってるよ…
いつになったら一緒に飲みに行けるのか?
毎日忙しそうな山崎に俺は声をかけられないでいる。
新人が一生懸命頑張っているのに邪魔するなんてとてもじゃないがしたくない。
コイツも4月からは先輩か…
なんだか自分の手を離れて行くようで、少し寂しい気がした。
自販機に向かい温かい缶コーヒーを買う。
そしてメモを書いてその上に缶コーヒーを置き、椅子にかけてあった山崎のコートを寝ている山崎の背中にかけた。
さて、帰ろうかな…。
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