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50 入社二年目3月。

『城田、悪い。』 『やっぱりダメですか…』 『ダメっていうか…お前の気持ちは嬉しい。お前のことも好きだ。でもな、お前が俺に抱いてくれている好きとは違うんだ…ごめん。』 『謝らないで下さいよ!!先輩、好きな人いますよね?』 『えっ?』 『小宮さん…ですよね?』 そう言われて俺は何も返事ができなかった。 『当たりですか?』 俺は無言で頷く。 『やっぱり。でも僕、諦めませんから!!』 『えっ?』 笑顔でそう言われて驚いた。 『先輩の恋が実っても実らなくても、僕は先輩のこと諦めませんから。』 どうしてコイツはこんなに強いんだろう? 俺は小宮さんにフラレたとき、こんな風にできるだろうか? いや、無理だ。 絶対その場で泣いてしまって、空気を重くする。 こうやって明るく接することができたら、次の日からも気まずくならなくて済むのかな? 『あっ!!小宮さんには内緒にしときますからね!!安心してください。』 『あっ…ありがとう。』 『明日からも普通に接して下さいね!!僕はフラレることわかってましたから平気ですし!!』 『おう…』 そう返事をしながらも本当に城田はスゴイなと思った。 と、同時に俺もこうやって頑張らないといけない日が来るのかな…なんて。 まだフラレたくない。 まだ仲の良い先輩後輩の関係でいたい。 そればかりが頭をよぎって俺に勇気を与えてくれない。 ずっとこのまま… 臆病者の俺は、それでもいいと思ってしまった。

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