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59 入社三年目4月。

修羅場とは、こういうことをいうのでしょうか? 一次会で抜けてきた俺と小宮さんは今二人で歩いているのだが… 沈黙。 どちらとも話すことなくただひたすら歩く。 いや、あれは事故であって俺は別に… そう言いたいのになぜか口が動かない。 『山崎。』 少し前を歩く小宮さんが口を開いた。 『は、はい…』 『俺が今から言うこと絶対に引かないか?』 『えっ…』 『引かないか?』 『ひ、引きません!!』 何かわからないけど、取り敢えずそう答える。 『あのな…俺、今スッゲー腹立ってる。』 『は、はぃ…』 『城田に。』 『城田に?』 『城田にヤキモチ妬いてる。』 『えっ?』 『俺も山崎と…キス…したい。』 今なんて? 小宮さんが城田にヤキモチ妬いて、おまけに俺とキスしたい? このイケメンからそんな言葉が… なんか可愛い… 『引いた?』 『ひ、引いてません!!むしろ嬉しいっていうか、なんていうか!!嬉しいです!!』 もう訳のわからないことを散々叫んだ。 嬉しいしか言ってないし… 小宮さんが笑い出す。 そして俺に向かって歩き始めて… 『キス…していい?』 そう言われ俺の心臓は高鳴る。 そっと顔が近付いてきて俺は目を閉じた。 フワッと触れるだけのキス。 離れていく顔をすぐに目を開けて見た。 なんだか恥ずかしそうな顔がとても可愛い。 俺、本当に小宮さんと付き合ってるんだ… そう思うととても嬉しくて、もう一度小宮さんの唇を確かめたくなった。 俺だけの唇…俺だけの小宮さん… 『もう一回…いいですか?』 そう言うと、もう一度優しいキスをくれた。

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