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62 入社三年目6月。

《男性同士 セックス》検索 『ブフォ!!!』 飲んでいたお茶を吹いてしまった。 昼休み、朝から天野さんに言われた通りネットで検索してみた。 一番端っこの席でひっそりと携帯を見る。 ア…アナ…アナルって… 尻の穴だよな? 想像しただけで冷や汗が出る。 こんなとこに入んのかよ… 純粋な疑問の中にもう一つ疑問が。 で、どっちがどっち? 天野さんの言葉を思い出す。 イメージ的に処女… 俺のこと? ってことは、俺が挿れられんの!? 想像しただけで尻の穴が痛い。 男同士の恋愛は付き合ってからでもハードルが高いようだ。 もしそうだとしたら… 俺は童貞のまま? まぁそれはこの際どうでもいい。 本当に今夜そんなことになってしまうのか… そう思うとなんだか怖い。 うん。女子だな。 昼からも頭の中はさっきのことばかり。 俺は、なんだかんだ考えながら仕事を終えた。 『…崎!!山崎!!!』 『あっ…!!すみません!!』 『どうした?さっきからボーッとして。』 『いや、なんでもありません!!!』 小宮さんと飯を食ってるにも関わらず、何をボーッとしてるんだ、俺は。 昼間に検索したことが頭から離れないでいた。 二人でいると余計意識してしまって息が詰まる。 こんな公共の場でそんなことになるわけがないのに、俺本当バカだよ…。 『体調悪い?』 『いや、違うんですよ!!!大丈夫です。』 『なら、いいけど。』 絶対不審に思ってるよな… 女性経験もないからかこういうことにはからっきし免疫がない俺。 本当ガキだよ。 今までの彼女ともキス止まり。 しょうもないこと言ってないで、もっと早く童貞捨てとくんだった…。 『あぁ、食った。そろそろ行くか?』 『はい。』 梅雨ということもあり、外に出ると雨が降っていた。 『うわ。最悪。傘持ってねぇよな?』 『持ってないですね…』 『うーん。どうすっかな…』 『駅まで走りますか?』 『だな。』 二人して駅まで走る。 なんだか学生みたいで楽しい。 『ひゃぁー。べちゃべちゃ。』 駅に着き、俺はカッターシャツをパタパタしながら言う。 『お前、家遠い?』 『うーん。電車で30分ってとこですかね。』 『そっか。』 そう言いながら小宮さんが何かを考えている。 暫く沈黙が続き、小宮さんが口を開いた。 『俺んちの方が近いけど、俺んち来る?』 『なっ!!!』 ちょっと待て。 家!? 家に誘われた。ということは… 今日の昼間のことが頭に浮かぶ。 『ちょっと待て。またよからぬこと考えてるだろ。そんなに濡れてたら帰ってる間に風邪引くかな?って思ったから言っただけで…』 『あっ…なるほど。』 俺バカだ。 またそんなこと考えて… 童貞のクセに本当脳内ハレンチなんだよ。 童貞だからか? 逆に童貞だからいろんなこと想像しちゃうのか? 『どうする?』 『じゃ…じゃぁ、お邪魔します…。』 案の定、電車の中では緊張しすぎて何も喋れなかった。

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