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67 入社三年目6月。
『山崎…怖い?』
『えっ?』
目を開けると小宮さんが心配そうに俺を見つめていた。
『体震えてる。大丈夫か?』
『えっ…と…』
『怖いなら怖いって言え…』
『……怖い…です。』
そう言うと優しく頭を撫でてくれた。
『無理すんなよ。これから先長いんだから。』
そんな優しい言葉かけられたら俺、泣いちゃうよ…
『…貞なんです…』
『ん?なに?』
『俺…童貞なんです…』
『えっ?マジ?』
『引きました…よね?』
俺は自分で言っときながら後悔した。
『いや…理由あるんだろ?山崎モテないわけじゃないだろうし。』
『これ言うと絶対に引くと思いますけど…っていうか、俺のこと嫌いになるかも…』
『絶対嫌いになんないから言ってみ?』
『えっと…結婚する人としかしないって決めてて…いや、でももういいし、気にしてな…』
『いいんじゃない?』
全てを言い切る前に小宮さんに言葉を封じられた。
『えっ?』
『いいじゃん、それ。自分大事にしてて。俺もそうしとけばよかったな…初めては山崎がよかった。って、32まで童貞はさすがにキツイか!!』
そう言って笑っている。
俺をフォローしてくれてんのかな?
嘘でもそう言ってくれると嬉しくて涙が出そうになる。
『小宮さん…』
『ん。だから今日はキスだけな。』
そう言って頬にキスをしてくれた。
あぁ…やっぱり俺、この人のこと大好きだ。
もうこれ以上好きになれないぐらい好きだったはずなのに、今はそれを上回るぐらい好きで…
『小宮さん…大好き…です。』
そう言って小宮さんの首に手を回して抱きつくと、優しく抱きしめてキスしてくれた。
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