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89 入社三年目12月。
なんだかんだで研修の日になり、だるいながらも無下にすることはできず、一生懸命研修に取り組む新人をフォローする。
俺もこんな感じだったのかな…
何事にもがむしゃらで一生懸命、周りも見ずに突っ走って。
懐かしいような寂しいような。
自分ではまだ三年目だと思っていても、周りからはもう三年目という目で見られてるもんな…
俺も初心に戻って頑張らないとダメだな…としみじみ思った。
『じゃぁお疲れ。また明日。』
そう言って新人と別れる。
小宮さんとのときもこんな感じだったな…
二年前とたまたま同じ部屋でなんとも懐かしい気分になった。
壁一枚隔てた部屋で小宮さんのこと想像して抜いたっけ?
なんとも恥ずかしい思い出に少し赤面する。
まさか大好きな小宮さんと今お付き合いをしているなんて、あの頃の俺は思いもしなかっただろうな…
ふと携帯を見るとメールが一件入っていた。
『小宮さんだ…』
メールを開く。
《研修お疲れ。頑張って!!》
クリスマスに研修ということをすごく気にしていた俺に行っておいでと言ってくれた小宮さん。
イベントをいちいち気にする俺はやっぱり女々しいのだろうか…
声聞きたいな…
そう思うけど、迷惑かな?なんて考えると電話をかけることができなくて…
小宮さんと今日一緒にいたらまた結ばれていたのかな…と考える。
少しアルコールが入っているせいか、なんだかムラムラしてきた。
熱くなり始めたソコに手を伸ばそうとした時携帯が震えた。
『うわっ!!!』
驚いて携帯を落としそうになり、慌てて掴んだせいで画面も見ずに電話に出てしまった。
『あっ!!は、はい!!!って、小宮さん!?』
「山崎?どうした?焦ってる?」
『い、いや、焦ってません!!!』
なんか俺完全に怪しいじゃん…。
「そうか?まぁいいや。なぁ、今何してた?」
『い、今ですか!?何もしてませんよ。』
嘘つけ。小宮さんを想像してヌこうとしてただろうが!!
「そっか…俺はちょっと寂しくて山崎想像してた…」
えっ…?
なんだろう…なんかすごく可愛い。
付き合い始めて気付いたのだが、小宮さんはお酒を飲むと少し可愛くなるクセがあるらしい。
甘える?わけではないけれど、なんだか可愛いのだ。
『小宮さん、飲んでます?』
「あれ?なんでわかんの?」
『わかりますよ…』
なんでかは言わない。
そんな可愛い姿他の人に見せられるのは嫌だから。
「なぁ…山崎…」
やけに艶っぽい声で言われて電話越しなのにドキリとする。
『はい。』
「しよっか…」
セクシーな掠れ声に結ばれた時の記憶が一気に蘇る。
結ばれたのはまだあの一回きりで、俺の頭にはあの時の記憶がくっきりと刻まれている。
『な、なにをですか!?』
俺は少し焦りながら電話を握る手の力を強めた。
「電話でエッチ…」
ヒェー!!!!!!!!
なんですと!?
電話で………
しかもセックスじゃなくて、エッチって言った!!!
どこに食いついてんだよ!!と自分に突っ込みたくなるが、可愛すぎる小宮さんを想像して一層ムラムラが昂ぶる。
ヤバイな…
さっき熱くなりかけていたモノが今ので結構な段階まできてしまった。
電話でって…
そんなことしちゃっていいのかな…
とか思いながら新人との境の壁に耳を当て壁の薄さをチェックしている自分が憎い。
やる気満々かよ…
「ごめん山崎…今の冗談。」
電話から聞こえる声にハッとして返事をする。
『えぇ!?冗談なんですか!?』
「いや、山崎何も喋んないし、引かれたんだと思って…」
少し寂しそうな小宮さんの声にドキドキする。
なんだろう…
この人のすべてが俺を反応させる。
『いや…新人の部屋との境の壁の薄さを確かめていまして…』
そう言うと小宮さんが笑った。
「山崎可愛いのな。想像して笑っちまった。」
いやいや、あなたの方が可愛いですよ。
って、バカップルか。
本当この人には俺のすべてが持って行かれる。
もうこれから先、俺は小宮さんがいないと生きて行けないのかな〜
そんなことすら考えてしまうぐらい小宮さんのことが好きで…
『小宮さん…好きです。』
俺の不意な告白に電話口で俺モテモテだなぁなんて笑いながら、
「俺も好きだよ…」
と、優しい声で言ってくれた。
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