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91 入社三年目3月。
『山崎、今日いいか?』
なんだかバタバタして、昨日は直接話したり電話をすることさえできなかった。
『はい。』
小宮さんに夜会おうと誘われて返事をした。
なんだかソワソワして今日も仕事が手に付かない。
遠距離なんて無理だと言われ、別れようなんて言われるのかな…
結婚の二文字のように2人を繋ぐものは本当になくて、男同士の恋愛なんて所詮そんなものかと寂しくなる。
仕事も終わり、会社から近い居酒屋で小宮さんを待つ。
『悪い、遅れた。』
『いえ、お疲れさまです。』
『あのな…』
小宮さんが話し出したと同時になんだか手が震えた。
その手を周りの人達にバレないように、小宮さんがテーブルの下でそっと握ってくれる。
『大丈夫か?』
『大丈夫です。すみません。』
なんだか重い雰囲気になりながら小宮さんが口を開く。
『あのな…転勤の話なんだけど。』
『はい。』
『大阪に決まったよ…』
『大阪!?』
『あぁ。でも北海道や福岡よりは近いだろう?』
『でも…』
『わかってる。今まで毎日顔合わせていたのに辛いよな…俺も辛いよ。』
俺の思っていたことを小宮さんも思っていてくれて嬉しかった。
でもそれ以上に現実を突きつけられて辛い。
『いつから行くんですか?』
『んー。引越しもあるから3月25日ぐらいから大阪と東京の行き来が始まるかな?部長には仕事中に抜けたりするのも許可もらった。』
『そうですか…』
『そんなに落ち込むなよ。一生会えないわけじゃないだろ?』
確かにそうだ。
なんで俺こんなに躍起になってんだろう…
なんとも言えない寂しさと焦り。
離れていたってお互いを思う気持ちさえちゃんとしていれば、こんなに焦ることないのに。
『俺は山崎と別れる気なんてないけど、山崎は?』
『俺もありません。』
『じゃぁ大丈夫だな。長くて3年だ。お互い頑張ろう。』
三年…
この会社に入って三年だけど、月日が経つのはとても早かった。
でもそれはきっと小宮さんがいたからで…
遠距離恋愛を俺は三年も耐えられるのかすごく不安になった。
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