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96 入社四年目4月。
今頃小宮さんは何してるのかな…なんて。
暇があれば小宮さんのことを考えている。
休憩所でコーヒーを飲みながらアポまでの時間を潰していると城田がやってきた。
『先輩。』
『ん?』
『小宮さんいなくて寂しそうですね。』
『まぁな。』
『その左手の薬指、気に食いません。』
『はぁ?』
『小宮さんも意外に女々しいですね。先輩を縛り付けるなんて。』
『お前毒々しいな。』
『そうですか?まぁ先輩のこと好きですからそれ気になりますよね。』
なんともまぁ…本当にコイツは強い。
サラリと俺のことが好きだとか、まだ諦めてないとか平気な顔で言ってくる。
城田になびくつもりはサラサラないけれど、ここまで言われるとちょっと尊敬する。
『俺が気に入って付けてんだよ。』
『それはお熱いですね 。』
そう言いながら一礼すると城田は事務所に戻って行った。
それだけ言いにきたのかよ!!と突っ込みたくなるが、嫌いにはなれなくて可愛い後輩だ。
『いいの付けてるな。』
左手を電気にかざしながらキラキラと指輪を光らせていると、突然そんなことを言われて驚き、焦って手を隠すとそこにいたのは小宮さんだった。
『小宮さん!?』
『よぉ!!』
『よぉじゃないですよ!!こっちくるなら言ってくださいよ!!』
『いや、驚かせたくて。』
『なんですかそれ。意地悪しないでくださいよ。心臓に悪いです。』
『でもまぁおかげでいい顔見れたよ。その指輪誰かになんか言われた?』
『いや、特には…。あっ…まぁ城田ぐらいですかね。』
『アイツまだ山崎のこと諦めてねぇの?』
『らしいです…』
『強いな…。まぁその指輪付けてたら安心かな?』
そう言いながら頭をポンポンされた。
焦って周りを見回すが幸いにも誰もいなくてホッとする。
『今日はどうしたんですか?』
『ん?あぁ、なんか西野がちょっと聞きたいことあるからって…山崎の顔も見たかったし、電話じゃなくて帰ってきた。』
ニヤリと笑われてドキドキする。
俺の顔も見たかったなんて…さりげなく言われ赤面する俺。
あぁ…本当、小宮さん好きだな…
『いつ帰るんですか?』
『昼には帰るよ。向こうでも外せない仕事あるし…』
『そうですか…』
『まぁ今度歓迎会と合同で送別会もしてくれるらしいから…その時会えるしな。』
『そうですね。その日夜帰るんですか?』
『次の日休みだし…泊めてくれるか?』
『は、はい!!!』
『じゃぁ楽しみにしてる。』
そう言いながら事務所に消えていく小宮さんの後ろ姿を見ながらニヤニヤする。
ハッとなり必死に頭を横に振って正常な顔に戻すと、俺も事務所に戻った。
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