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101 入社四年目4月。

『無理矢理誘った感じでごめんね。』 『いえいえ。こちらこそすみません。』 『じゃぁ乾杯。』 そう言ってお互いビールを一気に流し込む。 『山崎君…』 『あっ…山崎でいいですよ。』 『そう?じゃぁ山崎、今何年目?』 『今、四年目です。』 『四年目か…俺が名古屋行ってすぐだな。』 『あっ!!そうみたいですね。西野さんこっちにいらしたって聞きました。』 『そうなんだよ。小宮知ってるよね?あいつと同期なの。』 『そ、そうなんですか…』 急に出た小宮さんの名前にドキドキする。 ダメだ…平常心、平常心… 『こっちはなんかだいぶ変わったね。さすが東京って感じ。』 『そうですね…お店とかもすぐ変わっちゃいますもんね。』 俺たちは仕事の話を中心に、ノルマのこと、営業の仕方、これからのことをたくさん話した。 わかったことは…この人は本当に仕事熱心で、キッチリした性格であるということ。 なんか営業成績がいいのわかる気がするな… 『で、山崎。』 『はい。』 『プライベートなこと聞いてもいい?』 『えっ?』 『その指輪。結婚してんの?』 『けっ!?けけ…結婚はしてませんよ!!!』 変などもり方でそう答えるとまだまだ西野さんの質問攻めは続く… 『そうなんだ。じゃぁ彼女とのペアリングって感じ?』 『そ、そんな感じです…』 小宮さんにこの指輪のことみんなになんて言う?と聞かれた時に彼女できました〜とか適当に言っときますって言ってたクセに、いざ真正面から聞かれるとサラリと答えられないもんだな… 実は、この指輪のことを言われたのは天野さんと城田だけで、他の人達からは一言も言われていないのだ。 部長には勝手にモテないキャラにされてクリスマスの研修にいつも引っ張り出されるくらいだからな… 俺の指に指輪が光っていたってファッションとしか思われてないのだろうか… それはそれでなんか寂しいな。 『彼女と長いの?』 『うーん。一年ぐらいですかね…』 『一年か。まだまだこれからって感じだな。でも結婚とか視野に入れてるんだろ?』 結婚… なんだかその二文字が頭の中で回って胸を締め付ける。 そうだよ… 俺たちは結婚できないんだよ。 急に現実を突きつけられたみたいで落ち込む。 『どうした?』 『あっ!!えっ…あ、えっと…結婚はまだ…』 『そうか。彼女可愛い?』 『そ、そうですね…可愛い…かな。』 指輪もはめてるんだし、そろそろちゃんと彼女のイメージ設定しとかないとマズイな…と心の中で思った。 『山崎、好きなタイプは?』 なんだこの人、結構グイグイ来るな…と思いながらも質問に答えないわけにも行かず、答えを探す。 『うーん…一緒にいて落ち着ける人ですかね…』 『なるほど。』 よし、こうなったら逆に質問してこの場の流れを変えようと質問する。 『西野さんはどんな子がタイプですか?』 『山崎。』 『はい。』 『いや、呼んだんじゃなくて…山崎がタイプ。』 『はぁ!?…じゃなくて…えぇ!?』 ビックリしすぎて先輩に「はぁ!?」とか言ってしまった。 『いや、本当に。』 『またまたご冗談を…』 『本当だって。』 なんとかこの変な空気を変えたいと必死に話題を見つける。 『ま、まぁ…そんなことより、家はこの辺ですか?』 『何?家来たいの?来る?』 俺はアホか… こんなの話題チェンジになってないし… ニヤリと笑いながら言ってくる西野さんに向かって、首を横に振る。 『うそうそ。冗談。』 『ですよね。』 『いや、タイプっていうのは本気。』 もう俺は何も言えなくて手元にあったビールを飲み干すことしかできなかった。

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