126 / 147

126 入社四年目10月。

『えぇっ!?何これ!!!』 会社の掲示板に貼り出された辞令に大声を出す。 『うるさいなぁ。まぁ、よかったじゃん。』 そう言って天野さんがクシャクシャと俺の頭を撫でてくれた。 辞令 10月1日付けで、 小宮圭介を東京支店係長に命ずる。 小宮さんが帰ってくる。 ワクワクが収まらなくてどんな顔をしておかえりと言えばいいのかと考える。 でもなんでこんな急なんだろ? その日の朝礼で部長がした話に驚いた。 『4月から名古屋よりこちらに来て頑張ってくれていた西野君だが、本人立っての希望で大阪本社の新人育成の方に回ってもらうことになった。 その代わりと言ってはなんだが、掲示板に貼ってあった通り、小宮が係長としてこちらに戻ってくる。 みんなよろしく頼むな。』 そういうことか… 西野さんに感謝すべきか否か。 そんなことを考えながら休憩所でコーヒーを飲んでいると西野さんがやってきた。 『おう山崎。世話になったな。』 『こ、こちらこそ。』 『小宮帰ってくるってよ。よかったな。』 『ま、まぁ…。って、西野さんもしかして…』 『アホか。お前らに気を使ったわけじゃねぇよ。7月の新人育成講義に参加させてもらった時に向いてるかもって思っただけ。その時に俺の講義聞いたお偉いさん方から声がかかってね。』 『なるほど…』 納得。確かにあの時の講義はとても聞きやすくて俺も勉強になった。 西野さんに向いているのかもしれない。 『まぁ、これからも頑張ってな。色々と。』 そう言って頭をクシャクシャと撫でられた。 天野さんもそうだけど、俺ってそんなに頭を撫でられるキャラじゃないんだけどな…と髪を整えながら思うが、喜んでいる自分もいて…。 『西野さん、本当にお世話になりました!!』 深々と頭を下げると西野さんが片手を上げて事務所へと戻って行った。

ともだちにシェアしよう!