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134 入社四年目2月。
『ただいま。』
『おかえりなさい!!』
俺より遅く帰ってきた小宮さんを玄関で迎え入れる。
『あぁ…なんかいいな…』
『何がですか?』
『可愛い奥さんにお出迎えされるの。』
『なっ!!!』
なんともまぁ恥ずかしいことをサラリと…
こういうところも小宮さんって感じで好きなんだけど…。
『俺、今日部長に有給使い切れって言われた。』
『あっ…俺もです。』
『なんか来年度から繰り越せなくなるみたいだな。』
『そうみたいですね。』
『いつ取る?』
『んー。今のところ2月は無理そうですかね…結構アポとか予定入ってるし。』
『そっか…。』
『小宮さんは?』
『俺もまだいつ取れるかわかんねぇな。』
『そうですか。』
いきなり有給を使い切れと言われても無理な話だ。
営業は何かと融通がきくだろ?と思われがちだが、お客さんの都合で急に会う日が変わったり休みの日に出ることになったり。
結構バタバタと忙しいのだ。
『なぁ…一緒に風呂入る?』
『なんですか急に…』
『いや、なんとなく。嫌ならいいけど…』
なんだか寂しそうに風呂場に向かう小宮さんが可愛くて後を追う。
『ん?』
『一緒に入ります…』
そう言うとすごく嬉しそうな笑顔が返ってきた。
チャポンと二人で浴槽に並ぶ。
結構広いマンションのため、風呂場もかなり広い。
たまにこうやって二人で入るのだが、何度一緒に入っても緊張する。
『あのさ、友達の結婚式いつだっけ?』
『3月1日です。』
『そっか。結婚式行ったことある?』
『いえ、今回が初めてなんです。』
『俺、人の結婚式すごく好きでさ。なんとも言えない雰囲気がいいんだよ…』
『そうなんですか。楽しみです。』
なんだろうな…
なんだかすごく寂しい気分になってきた。
俺たちは結婚できないんだ…
わかっていたことだけど、現実を突き付けられて…なんだか辛い。
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