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一章~偶然とは最悪なもので~
数日後。
ついにキャスト、スタッフの顔合わせの日がやってきた。
受付で名前を伝え、第一会議室まで向かう。俺の後ろには、いつも通り鈴宮さんが笑顔を浮かべていた。
しばらくすると、第一会議室と掛かれた扉を見つけた。そこには
『カフェテリア キャスト、スタッフ顔合わせ』
と、書かれた紙が張り付けられていた。
今回の作品は、カフェをメインに行うらしい。
カフェで知り合った男女。しかし、女の方には婚約者が居た。それでも二人は惹かれ合う。幾多の困難を乗り越えて、二人は無事結ばれる。
という話らしい。俺もざっと聞いただけだからよくわからないけど。
コンコン
扉を小さくノックして会議室に入る。中には既に、半分ほどの人数が揃っていた。俺よりも若手の俳優たちは俺をみるなり、頭を下げてくる。その光景も、最近は見慣れてしまった。慣れとは怖いものだ。
「おう、祐大。久しぶりだな」
全員が一目おく中、いきなり俺に話しかけてきたこの男は、俺の一つ年上の神山廉だ。廉さんとは、二年前の共演を気に親しくなった。
「廉さん、お久しぶりです」
「お前は相変わらず堅苦しいな。ま、そこもお前の魅力だろうけど」
「どうも」
褒め言葉かは分からないが、一応お礼は言う。
廉さんの隣の椅子に座ると、他の女優達がわらわらと騒ぎ始めた。いつものことだから、わざわざ気にはしないが。
廉さんは大丈夫だろうか、と横目で相手を見たが、いつも通り目を瞑って相手を寄せ付けないオーラを放っている。たかが一年の差ではない。広い一年の差だと、つくづく感じさせられる。
気が付くと会議室にはかなりの人が集まっていた。廉さんは変わらず目を瞑っているが。
そこで扉がカチャリと開かれる。そこに立っていたのは、加瀬監督だった。
全員が立ち上がり、扉の方を向く。
「おはようございます。これからよろしくお願いします」
プロデューサーが代表として挨拶をすると、俺を含めた全員が頭を下げた。新人俳優が一人頭を下げずおろおろしているのを見て、隣にいた俳優が無理やり頭を下げさせる。こうなるのも仕方がない。俺だって、初めての時はそうだった。これは慣れだから。
監督が席に着いたところで、スタッフのリーダーが前に立つ。
確認を取ろうとした。
その時だった。
バタバタバタバタ!
悪魔の足音が聞こえてきた____
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