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偶然とは最悪なもので2

足音から数秒後。 会議室の扉はバタン、と大きな音を立てて開かれた。どうやら、足音の主は会議室に向かっていたらしい。 開かれた扉の外側に居るのは、俺と同じくらいの年代の男だった。 見るからに、モテそうな顔つきだ。モデルでもやっているのか?それとも、今回のキャスト?スタッフ? そんなことを考えながら彼を見つめていると、彼がいきなりこちらを向いた。 ヤバい、見すぎたか? 少し慌てて頭を下げると、彼はクスリと笑った。その笑顔に少し驚く。男にドキリとするなんて。 彼はスタスタと前に行くと、スタッフリーダーと何か話していた。スタッフリーダーは呆れたような表情、彼はヘラヘラと笑っている。 しばらくして話が終わると、彼はこちらへ向かってきた。そして、俺の隣の席に座る。どうやら俺の隣から、スタッフとキャストで分かれていたようだ。 彼はこちらへ顔を向けると、また小さく微笑みかける。前を向くと真剣な顔付きへとなるのだ。 このギャップは何なんだ。 そう思いながらも、俺は前へと顔を向けた。 今回の段取り。始めにスタッフリーダー、監督などの紹介があり、次にキャスト、最後にスタッフの紹介がある。その後台本が配られ、本日は解散となる。 スタッフリーダーと加瀬監督の自己紹介が終わり、今度はキャストの自己紹介となった。 俺は主演のため、一番に挨拶をする。 「主演を務めさせて頂く、春村祐大です。今作品が無事終了出来るように、いつも通りに頑張って行こうと思います。宜しくお願いします」 いつも通り、同じような文章を読み上げる自己紹介は終わった。俺が何を言っても、若手からしたら「素晴らしい言葉」に聞こえるのだから。 所詮こんなものだ、そう思いながら席に座り直す。 「全力で頑張る」 こんな言葉、言うものか。この言葉を発する奴はまだまだ新人だ。レベルを高めたものは、普段通りにやればそれなりにできるのだから。 「神山廉。今回は視聴者の期待に添えるような演技をしていきたいと思っています。これからよろしく」 廉さんの自己紹介もいつも通り。人から一目置かれる、当たり前だろう。彼のそう言うところが、あこがれだ。 キャストの自己紹介が終わり、最後はスタッフの自己紹介になった。 カメラ、照明などなど。多くあるスタッフの中でも、俺が特に注目しているのは、演技指導係。名前も顔も知らないが、とても期待していた。 「次、演技指導係」 スタッフリーダーの指示で、演技指導係が呼ばれると俺はそわそわして。しかし外側には見せないようにして、立つ人を捜した。 しかし次の瞬間、立ち上がったのは思いも寄らない人物だった___

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