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偶然とは最悪なもので6

あれから家につくと、軽くシャワーを浴びプライベート服に着替えて、廉さんに連絡を入れた。 廉さんは 「直ぐ向かう」 とだけ短く告げて、それから連絡はない。 まぁ…。このあとのことは、いつものことだからよくわかっているが。 廉さんとのみに行くときは、必ず決まった迎えをされる。 数分後。 家の外で、バタンと車の扉が閉まる音がする。 来たか、そう思いながら財布とスマホを持ってソファーから立ち上がる。カーテンの隙間から外を見ると、いつもと同じように、高級感溢れる車が止まっていた。 その車の後部席から身をかがませ出てきたのは、デニムが似合う長身の廉さんだった。 廉さんは、なれた足取りで俺の家の敷居を跨ぐ。 ガシャン、と金属の擦れる音がして門が開く。目の前にある大きな扉まで、戸惑うことなく足を進める廉さん。その扉の横に付属されるボタンを押すと、ピンポーン、と綺麗な音色が響く。 その音を頼りに、玄関へと足を進める。モニターなんて見なくても、廉さんだって分かっているからそのままドアノブに手をかける。 「廉さん、こんばんは」 「おう、遅くなってごめんな」 玄関先に立っていた廉さんは、長い足を更に目立たせるぴったりとしたデニム。白いTシャツの上から赤紺チェックのシャツを着ていた。 おまけに、俺には到底似合わなそうなゴールドのネックレスを首から下げていた。暗闇にも関わらず、廉さんの存在感はでかかった。 「それじゃ、行こうか」 微笑みながらそう言う廉さんは、夜特有の甘い雰囲気を醸し出している。フェロモン、だろうか。俺には無いものが、廉さんにはたくさん備わっている。 先輩なんだなぁ、なんて。 それからいつも通り、廉さんが乗ってきた高級感溢れる車に乗り込み店へと向かった。 カランコロン たどり着いたのは、賑わいを見せる街の外れ。地上から地下へと続く階段を下っていくと、そこには一枚の黒いドアが在った。シックで大人な雰囲気の店だと、ドアだけでなんとなく分かる。 その重たそうなドアを、廉さんが慣れた手つきで開けていく。すると、ドアの雰囲気とは打って変わって、可愛らしい音色が俺達を出迎えた。 廉さんの後について店の中へと入る。 店の中は、ドアから想像できるような内装になっていた。 奥にはカウンター席。側面の壁には三つのドアが付いており、そのうち二つは個室、もう一つは業務員室。ドア側の壁にはダーツがある。 そして、何よりも目に付くのが中央にある筒型の水槽だ。下から天井まで水槽が通っている。その中には熱帯魚だろうか、きれいな色の魚が優雅に泳いでいる。水槽内のスポットに照らされて、芸術のように。 店内の明かりは水槽から漏れる光だけで、かなり薄暗かった。でも、俺はこの雰囲気は嫌いではない。寧ろ好きな雰囲気だ。 廉さんに導かれるがままに、カウンター席に座った。

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