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偶然とは最悪なもので7
店に着いてからもう二時間ほど経つだろうか。
カクテル&酒の威力は凄いもので、普段はそこまで酔わないタイプの俺も、さすがに酔いが回ってきた。
「本当に最近の新人は根性がないんれすよぉ。ちょーっと怒ったらけれ、すぐに泣くし、逆ギレするしぃ」
「はいはい、そうだな。確かに偉そうにしてるよ」
「ですよねぇ。廉さんからもガツンといってやってくらさいよ、ねー」
今まで酔ったことも無いため知らなかったが、俺は酔うと面倒くさいらしい…。絡み酒が始まった。
それからどれくらい絡んでいたのだろうか。
俺は眠たくなり、寝たらしい。
※適当な物言いで申し訳ないが、記憶があまりないんだ
次に目が覚めると、俺は車に揺られていた。周りを見渡すと、隣に腕を組んで寝ている廉さんの姿が在った。寝ている姿すらもフェロモンだだ漏れで、酔いが回っている俺はそのフェロモンにやられてしまったのだろう。
運転手に「廉さんは俺の家に泊まる」と伝え、そのまま俺の家まで廉さんを連れ込んだ。
寝たままの廉さんをベッドへと転がし、さあこれから、と言うところで、こんな時間にも関わらずインターホンが家に鳴り響いた。
「はいはーい」
普段はちゃんとモニターで確認してから出る俺だが、酔っていたためそれすらも忘れていた。
と、いうか、来るもの拒まず体勢に。
そんなんだったから…
「よぉ、祐大」
「あー、雅癸ぃ。どーしたん?」
こんな男ですらも、部屋に招き入れてしまったのだろう。
「なんだ?酔ってんの?」
「あはは、そうかもー。でさー、今から廉さんとエッチなことヤるんだけどー、雅癸もするー?」
「…そっちから誘われるのは予想外」
その後のことは全くもって記憶にない…。
雅癸side
まさか祐大本人から誘いが来るなんて、思ってなかった。今日は祐大のマネージャーさんに家を教えて貰って、話するために来ただけだったのに。
あの日の事を…。
なのになんだ?来たらベロベロに酔ってるし、ベッドには他の男?しかも誘われるとか、こんなの俺が耐えれるわけねーだろーがっ!
背筋にゾクゾクと何かが走った。俺、今どんな顔してんだろ。すげーにやけてんのかも。口元の緩みが収まらない。
祐大も祐大で、どんな顔してんだよ。顔真っ赤にして俺に向けてくる笑顔、瞬殺だわ。
すまん。謝るつもりだったけど、無理そうだ。ひとまず誘われるがままにヤる。それが今の俺の指名!
「祐大…」
熱く火照る身体を抑えつつ、転がる男の隣に祐大を押し倒した。緩みっぱなしの口元を直すためにも、祐大の唇と重ねる。
数年ぶりの祐大の唇の感触は、あの頃と変わらないままだった。まるで女みたいな…。そんなこと言ったら殴られるだろうけど。でも、乾燥とか全然してなくて、ちゃんとケアしてるんだなって思う。
…本当にいいのか?ここで祐大としてしまっても。
不意にそんな考えが脳裏をよぎる。
これじゃあの時と変わらないんじゃないか?今回は確かに承諾を得ている。でも、それは絶対に祐大の本心ではない。かなり酔っているんだろう。
ここで祐大を抱いてしまったら、またあのときと同じことの繰り返しだ。またあの時みたいに、嫌われる。
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