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偶然とは最悪なもので8
押し倒した祐大の上から退き、隣に転がる。
「雅癸ー?ヤらないのー?」
隣からまったりとした声が聞こえてくる。その声で誘惑するのは止めて貰いたい。声だけでとか、俺やばくねーか?どんだけ惚れてんだよ。
「抱かねーよ。萎えた」
「えー、つまんねーの」
わざと素っ気なく返すと祐大は口を膨らませて、唇を尖らせた。その顔も、普段の祐大からは想像できないくらい子供らしい表情で、また頭がくらむ。
「なんでそんな可愛い事ばっかすんのかな…」
ため息を付きながら部屋を出ると、廊下の壁にもたれかかりスマホを取り出した。
あらかじめ聞いておいた「廉さん」とやらのマネージャーに連絡をいれる。なんか話してる間に仲良くなったから、連絡先聞いておいた。こんな所で役立つなんて思ってなかったけどな。
『もしもし?川村くん、こんな時間にどうさたの?』
「お宅の廉さんが、人気俳優の祐大の家で寝てるんで、引き取りにきてもらえる?」
『祐大くんが?わかった、直ぐ行くよ』
かなり挑発的な言い方だったが、直ぐに承諾してくれて、切る間際に車のドアを閉める音が聞こえた。どれだけ行動はやいんだ、この人。
ひとまず廉さんを玄関まで連れてくるか。
寝室まで戻ると、廉さんをおぶって玄関まで行く。やっぱり俺と同じくらいの身長だから、祐大よりもかなり重い。
結構筋肉付けてんだな、廉さんは。見るだけでも、腕とかの筋肉はいい感じに付いてる。アクション系のオファーもくるんだろーな。
そんなことを考えながら玄関で座り待っていると、インターホンがなった。
モニターを確認すると、案の定廉さんのマネージャー。人の家で他人同士が顔合わせるって、どうなんだ。しかも家主はいねーし。
「こんばんはー、川村くん、ごめんね」
「んや、酔ってるみてーだから。早めに帰って寝かしてやって」
おんぶしてた廉さんをマネージャーに預けると、直ぐにドアを閉めた。ただの嫉妬だろうけど、祐大と同じベッドに寝ていた廉さんのことが正直言って、気に入らない。酔ってるって事は、こんなんになるまで二人で飲んでたって事だろうし。
「あー、もう…」
こんなに嫉妬深い自分がイヤだ。
祐大が居る寝室へと向かうと、そこにはベッドに横たわる祐大の後ろ姿が在った。正面からのぞき込むと、一定の速度で寝息を立てていた。
「寝てるのか…」
気持ちよさそうに眠る祐大を見ていると、自然と笑みが零れる。髪の毛をクシャリと撫でてやる。髪質もいいのか、なんて少しふざけたことを思いながら。
「寝顔かわい…」
頬を撫でてやると、寝ながらもその手にすり寄ってくる。こいつはネコか。でも、そんな所も好きだ。本当に、好きで好きでたまらない。
「お前が俺を嫌いでも、俺はお前が好きなんだ」
好きでいることを許してくれ。
眉を下げながらも俺は、そっと祐大に口付けた。
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