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第4話

 身体が少しだけ動く、ようやく自分で水を飲むこともできた。きっと凌馬は喜んでくれるだろう、その笑顔のためにももう一度元気になりたい。  「先生、もう大丈夫ですか?」  久々に涙もみせずに凌馬が笑う。  「怪我は回復に向かっているよ」  「ありがとうございます、先生のおかげです」  「いや、これが僕の仕事だからね。それより少しだけ時間あるかな?」  凌馬は先生に呼ばれて嬉しそうに後をついて行った。知りたくないのに僕にはわかってしまう。先生の凌馬への気持ちは僕が凌馬に向けるそれと同じ温度だということが。そして、凌馬が先生に向ける感情は、僕に向ける感情とは違っているということも。  「独りにしないで」  小さい声が出た、けれどその言葉は凌馬には届かない。だれもいなくなった部屋で僕は、ただ凌馬の事だけを想った。しばらくして戻ってきた凌馬は悲しそうな顔をしている。ぽろぽろとまた粒になった真珠が落ちる。  「ねえ、大丈夫だって言って。おいて行かないでお願いだから」  僕のそばに落ちるように座り込んだ凌馬は本当に悲しそうな声を出して泣いている。その鳴き声が僕のいる部屋に響いて部屋を凌馬の悲しみで満たしていった。  「凌馬君、仕方ないんだ。怪我は治っても……」  先生は僕の隣で涙を落とす凌馬を後ろからしっかりと抱きしめた。  「出来るだけのことはやったよ。けれど、ここまでなんだ。しばらく一緒に居たいかい?席を外しているよ」  先生は凌馬の髪に優しく口づけると、部屋を出て行った。そんな気はしていた。もしかしたらと思っていた、もう僕には残された時間が少ないということなのだろう。  神様、どうかお願いです。  残りの命の炎と引き換えに、今凌馬を抱きしめる腕と身体をください。凌馬に愛していると伝える術を与えてください。  

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