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蒼汰がノーマルなのはコレまでの経緯でよく知っている。だから、好きな子ができたと言ったら異性だと思うのは当然のことだ。間違っても同性愛者を好きになったとは微塵も考えないだろう。
ソレが普通だ。普通だが、少し考えればおかしいと感じたハズだ。晴信は同性愛者だ。その晴信が女心を知っているハズがないと言うことを蒼汰も知っていることを。
「女心は女、男心は男にって言うだろう?どう考えても相談する相手を間違ってるよねぇ?玉砕されたならまだしも、まだ、お友達関係にも発展してねぇんだろう?」
急に立ち止まって身振り手振りつきで絶対に踏んではいけない地雷をワザと踏む晴信に、蒼汰が胡乱な顔で言い返した。
「ソレ、嫌みなの?腹いせなの?ソレとも、憂さ晴らしなの?」
「えっ?そりゃ、全部に決まってるじゃん?なに、今更?」
「ほーおーーぅ」
肩に下げてたトートバッグから数枚の紙を取り出しながら、蒼汰は気のない相槌を打つ。
晴信は更に続けた。
「お前は俺に頼りすぎなの。俺がああしろこうしろと言ったところで実らねぇモンは実らねぇの、解るかなぁ?」
「ああ、左様ですねぇ~」
「現に今だって、そう対した助言もできてねぇだろう。少しは視野を広げて他の人の意見も聞こうって言う姿勢って言うモノをだな少しは試してみたらどうなんだ?」
「そりゃ、できたらそうしたいわな?」
うむうむと蒼汰が頷いている。
日高が男だと言うことを伏せているからできるだけ絞れる情報はせし留めたいが、こう言うふうに前にでられたら頷くほかなかった。
そして、おもむろに手にある紙を破ろうとしている。
ちなみに、蒼汰が破ろうとしている紙はココ数日、光佐が思案した布石であった。
ビリビリと紙が破ける音がする。両者の利益が一致しない今、この布石は必要なかった。蒼汰はそう判断したらしいが、晴信はそうではなかった。
蒼汰に利益があろうがなかろうが、脅し半分で呼び出されたのだ。
ソレ相応の利益が欲しいと言うモノ。
「お前、なにしてんの?どさくさに紛れてそう言う小賢しいことするから、日高って子に絶交だって言われるんだろうがよ?」
ガックリと肩を落とす蒼汰に、晴信の容赦ない声が飛ぶ。
「表の顔と裏の顔、在りすぎなの、お前。そう言うところ、上手く掻い潜っているように思うかもしれねぇけどさ、大人はもっとズル賢いから利用されてるって気づいた方がイイよ?」
蒼汰は晴信を軽く睨めつけた。
「…………なっ!!なんで、知ってんの?ソレも大人の見解ってヤツなワケ?」
「ホント、青いな、お前」
半眼でほふほふと笑う晴信は、破られかかった紙を蒼汰から奪いとるとチョロいなと鼻を鳴らした。
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