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  ◆◆◆ お前が本当に逢いたいと願うのだったら、ちゃんと逢えるよ。 だからそのときまで、忘れず覚えておいておこうな………。 ◆◆◆ ふわふわとした感情から思いだした祖父の笑顔とあの少年の記憶。 その記憶を包むように、白い霧が立ち込めてきた。 いままさに目の前にいる晴信がそうだと言うように、とても温かい霧が日高を包んだ。一拍をおいて、開かれた口元から熱い熱風のような吐息が漏れた。 いつまで経っても唇は離れようとしない。代わりに、履いていたズボンと下着が日高から離れていく。 ワケが解らず、日高はそろそろと目を開け、固まった。 膨らみかけた根茎を、大きな手が掴む。 上下にしごかれ、堪らず息をついてようやく我に返った。恥ずかしさのあまり晴信にしがみつくと、晴信が声を殺して笑った。 状況が状況なだけに、日高は慌てる一方で思考が定まらない。 この儘抱かれてしまうのか。やけにたくましい褐色に近い色の首筋にぞくりと背筋が震え、その先を期待している自分を知る。 目だけを動かしてソレを伝えると晴信は嬉しそうに笑った。 空が紅い。空気が深紅のように見えて、眩しく反射していた。 灼熱の風が頬を打つ。もう後戻りはできないのだと思うのだが、不思議と後悔はなかった。 晴信の指がゆっくりと尻の窪んだところを撫でる。その下にある蕾をまさぐり、キラキラと輝くねっとりとしたモノを指に絡めて中に押し入れるのが解った。彼の肩に思いきり爪を立てて荒い呼吸をすれば、頬に灼熱の風が吹きかけられる。しかし、その行為がこそばいのか、日高は首を振ってソレを拒絶するのだった。 あたたかい。いままで感じたことがない至福に心が震え、身体がむずむずとする。好きだと言う感情よりも先に愛しさが舞い降りた。 そうだ、思いだした。 「はっくんだ………」 同時に、まるでせき止められていた水が溢れだすようにして、忘れていた名前が駆け抜けていく。 アレは、七五三の祝いをした日だった。祝いの席に疲れた日高は、祖父の後を追って碁会所に向かっていた。そして、いつも祖父の膝に座っていると声をかけてくる少年と出逢った。彼は日高に向かって名を言った。 だが、日高は祖父のことで頭が一杯でその名を直ぐに忘れてしまっていた。日高は祖父にしか興味がなかったのだ。 そして、そんな日高に祖父は困ったような顔をして、少年と約束をしたのだった。 不意に音もなく部屋のドアが開くと、日高は目を大きく見開いて硬直した。 憎悪に満ちた般若の顔をした蒼汰がソコにたっていたからだ。 なんで、蒼汰が。 息を呑んで日高は、茫然と晴信の顔を見た。 身体に力が入り、晴信の指を思いっきり絞めつけてしまう。ひくひくと痙攣する中は蒼汰の瞳に大きく反応した。しこしこと擦られる内壁がそう気持ちイイモノでもないのに、きゅうきゅうと指の動きに応じ、とろとろとした液を分泌しはじめる。腕に細い血管まで浮きだたせる蒼汰が、突風のごとく晴信に向かって殴りかかってきた。 はっきりとしたことは咄嗟のことでよく解らないが、肩に鈍くずっしりとした痛みが走ったことは理解した。そして、はっとするほどの鋭い双眸が一気に崩れ去ったとしても、薄く笑みをたたえる口元に指一本触れて欲しくないと切に願ったことは覚えている。また、ソコにははっきりした感情がしっかりとあって、晴信はその証のようなモノを掴んでいた。 後退りをする蒼汰は、血の気が下がっていくのを自覚した。 コレは、どう言うことだと。もちろんただの錯覚だと言うモノでもなかった。コレほど凄絶な衝撃はほかにはない。いくら蒼汰でも、ソレくらい解る。 日高が晴信を庇った。 なぜ彼が、晴信を庇ったのかは解らない。 全身から冷や汗を流している蒼汰には目もくれず、日高は晴信を見つめた。 拳を握りしめながら、ソレでも蒼汰は晴信をぎっと凝視する。そして、怒号した。 「コレは、どう言うこと?晴信さん………!」 ソレを受けて、晴信は凄絶に苦笑する。 と、その下から一本調子な声がした。 「ソレ、オレの台詞!」 聞き捨てならない言葉に蒼汰は怯む。晴信はあからさまににやけてから日高を見下ろした。 「日高くん、ちょっと黙ってて」 日高の中から指を抜き、まだなにかを吠えようとする言葉を遮って、肩、大丈夫?と日高の気を大きく反らした。日高はそう言えばと肩口を擦って、うん、大丈夫と応える。 蒼汰は目を剥いて、不躾に晴信を指差した。 「ま、まさか、合意?」 「そうだけど、なんか問題でもある?」 晴信を押し退けて、日高がそう応えると蒼汰が絶叫したのは言うまでもないだろう。  

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