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親知らず 4

『親知らず』の処置は、噂に聞くほどには大袈裟なことはなかった。あっというまに終わったのは、佐竹の腕がいいせいなのかもしれない。 一週間後、様子を見せに再度歯科医院を訪れた。全く問題ない、と言われた。 そして、広瀬の歯の奥にある謎の物質についての話になった。 「何人か、同僚の歯科医師に聞いたんですが、誰も心当たりがないんです」と佐竹は言った。「私の恩師に紹介してもらって小児歯科の権威にも照会したんですけど、その先生もご存じないということでした」 佐竹は残念そうだった。 「ただ、その先生がおっしゃるには、これは、人工物で広瀬さんが3歳から6歳くらいの歳のときに入れられた可能性は高いということでした。それと、あくまで推定ですが、この小さなものは何かの一部で、実際には、もっと大きなものだったのではないかということです。推定の推定なのですが、奥に人工的な治療器を入れていて、とりだした際にミスがあって、この部分が残ってしまったということが考えられるそうです。それにしても、その治療器が何かは、その権威の医師にも推定できないそうです。広瀬さんは、小さい頃海外で過ごされたとか、旅行に行ったことはありますか?」 「ありません」と広瀬は答えた。「最初に海外に行ったのは、高校生のときです。覚えている範囲で、ですが」 「そうですか。もしかすると、海外だと私たちが知らない治療器が使われている可能性もあるかな、と思ったんです。すぐに取り出す必要はなさそうというのが、権威の先生も含めて今回聞いた先生たちの見解です。かなり奥にあるので、取り出すには、外科的な手術が必要かもしれません。気になることがあればいつでも相談してください。私も、継続して調べます。わかったことがあったら、お知らせします」と佐竹は言った。

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