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おそらく身長は百七十後半だろう。茶色の綺麗な髪に、犬のような人懐っこいタレ目。ほっそりとしているのに肩幅がある、まるでゴールデンレトリバーのような、大学生の彼。
俺よりも八歳年下のその彼に、俺は本気で一目惚れをしたんだ。
だが、いくら女装が趣味でも、男に興味なんてない。言い寄ってくる同性はいたものの、当然、男相手に恋心を抱いたことなんて、二十八年間。生まれてこの方今までに一度もない。
だが、彼は違う。流星は、俺が異性を想うような気持ちにさせた。
流星とは、それから何度も会うようになった。いつもの待ち合わせ場所の喫茶店で告白され、俺は彼と付き合うことになった。
流星には、俺が物書きをしているということは伝えてある。出会ったその日も、担当編集者から逃げていたという事実も。もちろん、俺が女ではないということは打ち明けてはいないが。
だが、それももう、終わらせようと思う。
何時までも俺が女だって思わせてこのままズルズル引きずってても、相手に俺を理解してくれなければ意味がない。
手放す気は、悪いがない。
彼を抱いて、既成事実を作ってでも、一緒にいたいと思っている。
俺なしじゃいられない身体にして、うんと可愛がってやるんだ。
だが、それには色々と手順もあるし、もしかしたら、万が一にでも、流星は俺を拒まないかもしれない。
いや、違う。俺が男でも受け入れてほしいと願っているだけ。
身体ではなく、流星に、恋心をもって、本当の俺を見てほしいと願っているんだ。
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