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 ……たとえ、愚かな願いだとわかっていても。  編集者を撒き、流星を連れて一軒家の自宅に戻る。ジーンズにグレーのシャツという、ごくごく普通の普段着に着替えた俺は流星を居間に座らせ、ウィッグを取った。  あるのは襟足よりも少し短めの黒髪だ。 「えっ、うそ! 絃さん……?」  目が大きく開かれ、驚きを隠せないようだ。 「俺は、本当は男なんだ。女だと思っていた?」  コクンと頷く流星は、やっぱり目を見開いたまま、放心状態だ。 「女じゃなきゃ嫌い? 俺とは付き合えない?」  本当は、こんなことを聞きたくない。正直、とても不安だ。俺を受け入れられなかったらと思うと、胸が苦しい。  逸らしそうになる目をなんとか堪え、驚きに満ちた流星の目を見ていると、彼はゆっくりと瞼を閉ざした。 「……嫌い。になれたら、今、こんなに悩んでません。惚れた弱みってやつでしょうか?」  流星は照れたように頬を赤らめ、にっこり笑った。  ――流星。  ああ、彼は本当に可愛い。 「流星」  手を伸ばし、彼を引き寄せると自らの唇を押しつけた。 「ん、ぅうううっ!?」  このまま。健康的な肉付きをした身体を押し倒したい。  深い口づけを堪能していると――。  コンコン。  誰かが居間ドアをノックした。  ノックする相手はもう知っている。編集担当者だ。  ……チッ。  もう戻ってきたのかよ。  舌打ちをすると、熱を持ちはじめた流星から離れる。

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