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第3話 やっぱり貴方が好き。

 side:流星  (いと)さんはやっぱり凄い人だった。俺を膝に乗せたまま、一時間も経たないうちに連載分を書き上げてしまった。  その間、俺は何をしていたかっていうと、画面上で組まれていく文字の羅列を目で追いながら、絃さんの吐息を感じてドキっとしたり、長い指の動きに見とれたりで、心ここにあらずって感じ。  ……なんだ、俺。絃さんが同性でも結構気にしてないじゃん。  それはきっと、見た目じゃなくて、絃さんの中身に惚れたんだ。  ――とはいえ、絃さんは男のままの姿でも、やっぱりすごく綺麗だけどね。  それで無事に作品を書き上げた絃さんは、担当編集者に無言で原稿を渡し終えた。  担当の人はとても苦労したみたいで、感激の涙を流しながら、何度もお礼を言って帰って行った。  二人きりになった俺たちはっていうと、恋人なんだもん。することは決まっている。  俺はすぐに絃さんによって、畳の上に押し倒された。 「い、と、さ……」  震えるこの強請るような甘い声は誰のものだろう。いつもの俺じゃない。  シャツに付いていた前ボタンを外され、上半身がはだけている。胸にあるふたつのそこに、さっきまでキーボードを叩いていた長い指が触れ、もう一方は薄い唇に含まれた。  静寂が広がるこの空間で、乳首を吸われる音が妙にリアルに耳へと入ってきて、真っ昼間から淫らな行為をしているんだっていうことが生々しく感じる。  自分のおかしな声も、こうやって組み敷かれる姿も恥ずかしくて、無言なんて耐えられない。 「乳首、舐めておいしい?」  気恥ずかしい気持ちをなんとかしたくて訊ねれば、薄い唇がほんの少し、俺の乳首から離れた。 「美味しいというか、反応があって可愛い。ここ、ツンと尖ってきた」

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