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 バクバク、ドキドキ。  俺は今、すごく挙動不審だと思う。  目が行ったり来たりを繰り返して、桃子さんを見られない。 「なんかね、主人の帰りを待つ愛犬みたいな顔してるから。そうなのかなって……」 「……っつ」  ……言ってもいいのかな。  でも、桃子さん。気取ってなくて優しいし、偏見もないような気がする。 「実はね、わたし、絃に、流星くんに似合う素敵な女性がいないか紹介してくれって頼まれたの」  なに、それ……。  そんなこと俺、頼んでない。 「どういう、こと?」  俺、絃さんと付き合ってるんだよね。  好きって言われたし俺も好きだって言ったもんね。  それにたくさんキスしたし、昨日だって抱かれたもん。  付き合っていなかったらそういうことはしないよね?  でも、どうして絃さんは俺に桃子さんを紹介したの?  俺、もしかして見限られた?  絃さんにうざいって思われてる?  桃子さんに言われた言葉が俺の胸に突き刺さる。  全身が冷たくなっていくのがわかる。 「っつ!!」  居ても立ってもいられなくなった俺は、もう何も考えられないまま、喫煙室にいる絃さんまで走った。  幸い今日は平日で人はあまりいない。そういうこともあってか、喫煙室は絃さんしかいなくてすぐに見つけられた。 「絃さんっ!!」  絃さんを見つけて駆け寄れば、初めはびっくりしていたみたいだったけれど、次第に表情はくもっていく。  絃さん、なんだか怒っているみたいだ。  眉間に深い皺が刻まれていて、見るからに不機嫌だった。  どうして?  どうしてそんな顔をするの?  俺、ホントにもう嫌われた?

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