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◇
「そうじゃない。馬鹿かお前は……そう思っていたら俺はここにいないだろうが……まあ、病人に説明したところで何もわからないだろうがな……」
絃さん、ため息をついたんだ。
面倒くさそうに、ふうううって……。
なんで? そんなに俺が面倒臭い?
たしかにね、俺って絃さんよりずっと年下だし同性だし。
俺は格好良くもないし綺麗じゃない。どう考えたって絃さんとは釣り合わない。
だけど俺は……俺はっ!!
「ふううって、イヤだ! 俺、絃さんと別れないからっ!!」
別れたくない!!
俺は頑なに首を振ったら、
「だから何故そうなる?」
眉間にいっそうの深い皺が刻まれたんだ。
「うえええっ、絃さんが怒ったああっ!!」
好きな人を怒らせて、俺。何やってるんだろう。
こんなに好きなのは俺だけなのかな。
もう絃さんは俺の事、どうでもいいのかもしれない。
涙は堰を切って溢れ出す。
「だあああっ! もう、静かにしろ」
「んぅうううっ!」
大声で泣きじゃくっていると、絃さんは俺の口を塞いだんだ。
だけど俺、風邪ひいてる。
キスは嬉しいけれど、今はダメだ。
絃さんに苦しい思いをさせたくない!!
「絃さ、風邪……うつっちゃう」
胸板を押して、必死に身体を離せば、俺はこてんとその肩に頭を乗せた。
「おかしなところで冷静だな、ほんと」
絃さんはクツクツ笑う。
その笑い声がとてもあたたかい。
ーーそれだけじゃない。俺の背中を撫でてくれている。
「い、とさ……」
優しくて、また泣けてくる。
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