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何笑ってんだよ。
女子に囲まれてへらへら笑ってんじゃねぇよ。
イライラする。
腹が立ってくる。
「りゅ……」
「ねぇ、君。綺麗だね。講義なんか放ってさ、一緒にお茶しに行かない?」
女子たちの群れに囲まれている流星を呼ぼうと口を開くと、近くにいた男子学生が俺に声をかけてきやがった。
しかもこの学生、馴れ馴れしいにも程がある。気易く肩を抱き寄せてきやがった!
タイミングが悪りぃんだよ、ガキが!
俺は今、それどころじゃねぇ!
睨みつけようと顔を上げると、ふいに力強い腕が右隣から伸びてきて、そのまま俺の腕を引っ張った。
びっくりして新たに現れたその人物を見れば……まさかの流星だ。
流星はついさっきまで女子に囲まれてへらへらしていた筈なのに、いったいいつの間に移動したのか。
背後を見やれば、先ほどナンパしてきた学生が口をあんぐりと開けて呆然と立ち尽くしている姿が遠ざかっていく。
「流星?」
「絃さん。どうして貴方がここにいるんですか?」
俺の手を引いて大股で歩く流星はとにかく不機嫌だ。
眉間には深い皺が寄っている。
いったいどうしたんだ?
こんな流星を見るのは初めてで、ちょっとびっくりする。
「りゅうせ……?」
どうしたのかと訊ねようとした矢先、進んだ先にあった教室の中に俺を押し込み、中から鍵を掛けた。
「肩なんて触らせて!」
「おい、なに言っ、んぅうっ!?」
そのまま俺を壁に追い詰めると、勢いよく壁に手を突き、俺の逃げ場をなくす。流星の唇が俺の口を塞いだ。
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