47 / 59
◆
かく言う俺も、絃さん本人からカミングアウトされるまで全然気づかなかった。
「服装、なんかヘン?」
あまりにも無言でただ絃さんを見つめていたから、絃さんは不安になったんだと思う。
首を傾げて訊いてくる。
あああ、その姿もすごく男心をくすぐるっていうか、もう完璧すぎる!!
「そ、そんなことないっ! すっごく綺麗です!!」
またもや見惚れていた俺は、慌てて我に返った。ブンブンと首を振れば――。
「ありがとう」
クスリと笑った絃さんの唇がほんの少し、俺の唇に触れた。
ドッキンッ!
「っつ、いとさっ!!」
啄むようなちょっとしたキスでさえも、俺の心臓は大きく飛び跳ねる。
……どうしよう。今日一日、俺の心臓は持つのかな。
「さ、10時過ぎたし、そろそろ中に入ろう」
俺の心臓はドキドキが止まらない。
もたついていると、絃さんの手が俺の手を掴んだ。
「うわわっ!!」
絃さんの手から体温が伝わってくる。
それにそれに、俺の手、緊張してるからものすっごく汗ばんでいるし!!
突然手を繋がれて声を上げると、絃さんが首を傾げた。
「?」
「えと……あの、汗ばんでいるからっ!」
汗っかきだって思われたくないよ、恥ずかしい!!
「構わないよ、流星と手を繋ぎたいから」
「……っつ!!」
俺は気にしますっ!
そうは思っても口にできないのは、俺も絃さんと手を繋ぎたいから……。
絃さん、やっぱり指長いな。
それに細い。
いや、女性らしい細さはないけど、指先まですごく綺麗だ。
ともだちにシェアしよう!