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――――。
――――――。
「…………」
「大丈夫か? やっぱりきつかったか?」
はい。俺は馬鹿です。自分から言い出したジェットコースターを乗り終えた俺は今、ベンチで横になっています。
予想以上に急な斜面で怖くて、おかげで今、とても気持ちが悪い。
対する絃さんは……っていうと。
すごい、顔色ひとつ変わってないよ。
俺なんかよりもずっと男前だ。
「……うう」
「ほら、膝貸してやるから顔を上げろ。そのままの体勢だと余計に気持ち悪いだろう?」
俺の頭をふわふわ撫でられるその手の感触が気持ちいい。
絃さん……。
目を閉じていると、周りの人たちの声が鮮明に聞こえてくるから不思議だ。
絃さんが美人だとか、俺たちがお似合いだとか。
そんな声が聞こえてくる。
絃さん、俺ね。ジェットコースターで伸びてしまうくらい情けない奴だけど、絃さんが好き。
思いきり息を吸い込めば、香水かな? ふんわりと心地好い風に乗ってシトラスの甘い香りが絃さんから漂ってくる。
しばらく横になっていると、ようやく身体も元に戻ってきた。
絃さんの膝枕がちょっと――いや、大分名残惜しい気もするけど……。
とりあえずはもっといろんな乗り物に乗って、他では見られない絃さんを新発見したい。
「もう平気なのか?」
「……うん」
起き上がった俺は――だけどああ、ダメだ。情けない気持ちでいっぱいになる。顔は俯いたまま、上げられない。
「じゃあ、次はもっとゆっくりなものに乗ろうか」
「絃さん……」
「流星?」
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