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第193話
「やっぱりなんでもねぇ、じゃあな」
振り返ることもなくそう言われて、いやいや!確認するまでは!と今度は俺の闘志に火がついた。
お腹はいっぱいだけど、茶をしばいて話し相手になってやろうじゃないか。ご飯は楽しく食べないともったいないだろう。
キラリ!これが熱血漫画なら眼鏡が光ってそれから目に炎が付くソレのアレだ。
「待って下さい!約束果たすまで、俺は見届けます!」
「は?何言ってんだ」
「だって、ご飯は楽しく食べたいじゃないですか」
「………そうだったな」
潤冬さんはしっかり覚えていて、それが嬉しくて、部屋までどっちが早く着くか競争です!
調子に乗って熱血ドラマの如く夕日ではないし太陽も全然別の所にあるけど前を指さして先に走って距離を少し作り振り向いて、俺に着いてこい!みたいな格好いい俳優になりきって言ってやった。
別にハンデが欲しかったからとかじゃないからな。ただちょっと先に走っていたら思いついただけであって、全然勝てそうになかったからとかじゃない。
熱血ドラマと言えば夕日に走っていくなと思って、そしたらちょっと俺の方が前にいて、ただそれだけだから。
「んな遠くから何言ってんだ!ぜってぇ負けねえ!マジでなかす!!」
「へ……?」
ようやっと表情が見える距離なのに通る声と般若並みの気迫がビリビリ伝わって来て、正直、超怖い。これ、捕まったら地獄決定の鬼ごっこだ。
今ここで、絶対に負けられない戦いが始まった。
しかも泣かすって聞こえた。もう泣いてますけど何か?
「ギャアアア!かんにんしておやす―――!!」
「ぜっってぇぇぇ負けねええくそめがねええ!!」
「ひええ!誰もいないからってここぞとばかりの生徒会長の暴言だ!誰かしょっぴいてどっか遠く追いやって!!この生き地獄から解放してええ!!」
「おら待てめがね逃げんじゃねえ!」
いやいやいや!般若が追いかけてきて待ってる奴いないから。もうどうしてこうなったとしか言いようないし息切れヤバいし足上がんないしもう無理学食どこ今どこあと何センチで学食もう無理分かんない。
なんか不良に追いかけられる平凡になった気分だ。いやまぁ俺は平凡だし潤冬さんもほぼほぼ不良だしまさに追いかけられてる今。
へへ、俺不良と平凡好きなんだよなぁ……
「っあ!!」
「おい!」
ふわっと思考を飛ばした瞬間、つま先が突っかかってバランスが崩れた。
もう後は強い衝撃を待つだけだ。確信したけど目を瞑るよりも早く体が倒れていく。
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