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第194話
「ってぇ…」
何を言っているか理解できないかもしれないけど、顔と手と膝と…来るはずの衝撃が来る前に重力が逆に働き始めたのか俺に秘めた力なのか体が仰け反ってなのか何が起きたのか理解できないけど気付いたら地面に尻もちを付いていた。
しかも、体のどこにも痛みがない。
俺、なにかの能力者だったみたいだ……
「はぁ…マジでもう無理。しんどい」
「……」
近くで聞こえる潤冬さんの声に聴いて下さいよ!俺能力者だったみたいで!
意気揚々と振り返って、ふと地面に寝ている彼に瞬きを2回する。
ゆっくり前を向き、眼鏡を直してもう3回瞬きして、自分の下を見て確信した。
俺、新しく絨毯買ったんだ。そう、潤冬さんにそっくりの絨毯………
「ギエエエッ!すみませんごめんなさい申し訳ございませんお怪我ございませぬかお主!?」
「……マジでさぁ、しんどいからボケるのやめろ」
「ボケてなどおりゃあせん!お主の心配を心の底からしておりまするゆひぇ!?」
急にガっと手が伸びて顎の辺りをギチギチ掴まれあ、これ本気の奴だ。咄嗟に判断した。
「マ、ジ、で、いい加減にしろよ」
「ぁい。ひゅいまへんへひは」
最後にもう一握りしてから剥がれた。もう少しでケツ顎になるところだった。危なかった。ケツ顎怖い。
「あの……」
「あ?なんだよ。またボケたら握り潰す」
「ひえ!なにを!?いや、そうじゃなくて!怪我!俺、あの!絨毯でその!」
ちょっと落ち着け。言うと手首足首を確認してからゆっくり立ち上がった。
ただ見ているしかなく、最後は見上げ、砂を払い確認の答えを待つ。
「捻っては、いない。掠り傷はまぁ、多少だな」
「ふぅ…安心しました」
「俺の運動神経なめんなよ」
「はは、そうですね。天下の生徒会長様ですからね」
「まぁな。立てるか?」
自分の方が怪我をしているのに俺に手を伸ばして来て、力いっぱい引き上げられた。
久しぶりにあんなに全力を出したからか、膝が大笑いしてた。
そりゃあもうガックガクに笑ってた。
「どっかの眼鏡の所為で体だるい」
「俺は般若に追いかけられて、歩くのもやっとです」
「あ?誰が般若だ」
「ひえ!?潤冬さんを般若だとは一言も言っておりませんが、なにか……」
「ぜってぇ、マジでなかす」
さっきまでなかすに意味はなかった筈なのになんか変な漢字で変換される。しかも鬼畜にしばき上げられるみたいな、BL漫画だったらベッドの上でって吹き出しの外に付いていそうな色んな意味でヤバいやつ。しばくのは茶だけにしてくれお願いだから。
俺、今日はここで解散した方がいい気がする。また明日一緒に食べればいいよ。一日くらいご飯抜いたって死にはしないよ。でも俺は今日一緒にいたら死が確定だよ。
「それではおさら、びゃ!!」
「なに逃げようとしてんだ?学食は目の前だぞ?」
「ひえっ、いつの間にか目と鼻の先に……」
良い匂いのする学食も、今は俺を切り刻んで具にする為の準備の匂いのような気がしてならない。
×××
この人生、万片の悔いあり。
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