198 / 291

第197話

一気に押し込もうかと腰を掴んだ。でも代わりに恐怖に目を瞑り眉を寄せ俺に縋っているのが分かってしまい出来なかった。 こんなことで躊躇うとか、どうかしてる…… 以前であればきっと泣こうが喚こうが血が出ていようがお構いなしに続けていた。何故なら皆、最後は良さそうに喘ぎ声を出していたから。 目の前のこいつだって他と同じ筈なのに、今日はそれが出来ない。痛い怖いと声を漏らし震えている玲音にこれ以上を求められそうにない。 「っ……」 「じゅんと、さ……?」 急ブレーキかけたらこっちがいてぇし、襲ってくるはずの痛みがそれ以降ないからと不思議そうに見て来たがそれどころじゃない。 少しでも動かれるともう抑えられないだろう理性スレスレだ。頼むから落ち着くまでそっとして置いてくれ。 こう考えるのは玲音が近いから。少し前の俺の所為でグッと近くまで寄っていて、体はくっ付いているし顔もいつ触れてもおかしくない距離にいる。 腰も上がっているが離れるまでいっていないから押し込む寸前のまま止まっているし正直、よく堪えたものだ。 「しないん、ですか……?」 「っ、はぁ…」 お前が……言おうかと思ったが、出たのは押さえていた呼吸のみだった。 「なんで……」 なんでも何も…… 動けないがしかし、脳は正常に働いている為、言葉ばかりが増えていく。 痛がったのは、泣いたのは、震えたのは縋って来たのは。 「お、まえ、が…」 「俺?」 「はぁ…」 「俺のせい?」 「っ、あぁ、お前が泣くから……」 だからもう少し落ち着くまで触れないでくれ。 そこまでは言えなかったが、今ので分からない程こいつもバカではないだろう。 「……もう泣かないので、続けて下さい」 「っ」 「潤冬さん」 「やめっ」 「大丈夫、ですから…」 まだ震えているくせに言いながら触れるだけの子供じみたキスをしてくる玲音に今度こそぷつと糸が切れた。 「もう知らねぇ!」 「ぅあっっ!」 尻を両手で開きキツイそこに無理やりに押し当てグイグイ中に進む。 ああっ!と痛そうな声が浴室に響いたけど止められそうにない。煽ったのはお前だと自分に言い聞かせそれでも痛みが少なく済むように一気に根まで押し付ける。 ジャブジャブと波立お湯だけが、背中に少し沁みた。

ともだちにシェアしよう!