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第205話

「これが、ばば……初めまして、羽葉玲音と言います」 「おばあっ、ブハッそのババじゃねえの、分かったか?」 ボソッと呟いたおばあさん発言をしっかり聞かれてて大爆笑したじゅん…このじじは未だに笑いやがって俺の傷ばかり抉っていく。 この恨みはらさでおくべきか…… 「はらさでおくべきか――!杏子と生クリームいただきま――す!!」 「おいてめえ何してんだっ!!」 「むふふひょおふふひふ――!」 「だからって俺の菓子ではらすじゃねえ!!」 「えーっ!なんで今ので分かったの??じゅんじゅんすごぉい!ほんとに仲良しさんなんだぁ」 「仲良しじゃねえ!!」 口の中一杯なのに思ってることが口から出た――!と思っていれば、向かいにいた鶴来先輩だった。良かった。もう一つ口が出来たのかと思って心配した。 でもどうしてわかったのだろうか……横を向けばギロリ、めっちゃくちゃに睨まれた。 スン……何事もなかったから、俺はもう一口、今度は自分のババを食べた。 目を瞑るとより一層分かる。生地に沁み込んだお酒がジワァ…と口に広がりたっぷりの甘い生クリームと瑞々しい杏子がそれぞれを邪魔することなく感じられ、相乗効果で美味しさを増す。 サバランにも似ているけどこっちはお酒の風味が強いから少し人を選ぶだろうか。個性あるケーキだ。 「ババ様……美味しいです…んぶっ!?」 俺の口を掴んでくる、だと? 広がる香りと甘みに気持ちまで緩んでいると、いきなり顔の下半分を手で掴まれてしまった。どういうことだろうか?俺が何かしたと言うのか……? 「あぁ、美味しいだろうなぁ?俺も滅多に食えねぇババだからなあ?」 きゃっ、どうしましょう!俺が食べてしまった一口に相当お怒りだわ?このお人…… 「………ゆ、ゆるひてペロ」 俺の秘儀、ウインク舌ペロだ。 これはある人の持っていた漫画に出てくるヒロインが行っていた、ウインクと同時に星を飛ばし相手を油断させ、同時に謝ることで怒りを鎮める技だ。崖っぷちの状況の時にしか使えない必殺技。 でも待てよ?このヒロインって成功率……… 「誰が許すか丸頭!!」 「久々の暴言!!でもマジ許すまじ!卍!」 「無理に流行りにノろうとしてんじゃねえ!つるぴか丸頭!」 「ぴかってはないですから!万年年上顔!!」 「は?……老け顔って言いてぇのか!?っざけんじゃねえぞ!!」 いや、今のは良く分かったなってちょっと感心してしまった。遠回しに言いすぎて自分でも褒めてるのかけなしてるのかちょっと自信なかったから。 「夫婦漫才始まったよ、あやちぃっ!!」 「「始まってねえ(ないです)!!」」 「きゃははっ!ハモった――!」 その後、ハモんじゃねえ!と何故か俺がまた怒られたのは言うまでもない。 マジ怒られた意味分かんない。マジ卍。 ××× 卍って、かざぐるまみたいだねと鶴来先輩は言っていた。

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