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第224話
「………は………か?」
「へあ?あぁ、書斎が広くてもはしゃぎ周らないので安心して下さい」
落ち込み全開の全然覇気がない自分の声に大概子供だな……と更に気落ちして、もう今日はソファで寝て過ごそうかとまで考えた。潤冬さんの言葉を理解するまでは。
「そうじゃない。卵焼きは作れるかと、聞いたんだ」
「え…?卵焼き?」
「甘くて、ふわふわとろとろの、卵焼き」
「あまくて、ふわふわとろとろ……」
「出来れば、その卵で作ったオムライスが食いたい」
「………」
ちょっと言葉が頭に入ってこなくて、ずっとうわ言みたいに甘くてふわふわとろとろが反響している。
あまくてふわふわとろとろ……甘くてふわふわとろとろのオムライス………甘くてふわふわとろとろ……これはどういうことだ?
甘くてふわふわとろとろを…ツクレルカ……つく、れるか?
卵焼き……オムライス……作れる……お昼ご飯はリクエスト聞きますから……?
ハッ!さっきの俺のあれの返事!!
慌てすぎてローテーブルにゴンッと膝をぶつけたけど気にしていられない。気が変わらないうちに言わなくてはいけないのだから。これを逃したらとなりのあの子の真似なんて一生出来ないだろうから。
「作れます!卵焼きも!オムライスも!!お昼ご飯に作ります!!」
「あぁ」
「じゃあ探検してもいいんですね!」
「あぁ」
「ぃやった――!じゃあさっそくあっちの扉から!!」
潤冬さんの後ろを駆け抜けて行けば直ぐに走んじゃねえ丸眼鏡!と怒声が飛んできて、前言撤回されないよう抜き足差し足でお目当ての扉まで近づいた。
×××
第一の扉、オープン!
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