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第225話
羽葉のいなくなったリビングでは嵩音が大きな溜め息をハァァ…と吐いていた。
正直、さっきのアレを言った時、笑われ失望されるんじゃないかとらしくもないことを考えてしまった。冷静沈着で近寄りがたい生徒会長の自覚があるからだ。
誰もが憧れる容姿、頭脳で子供っぽいことは嫌い。笑わないけどSなところが格好いい。
ストイックな食生活。コーヒーはブラックのみ。お菓子も嫌い。差し入れや手作りなんて以ての外。テレビなんて浮かれたものは見ないしニュースをスマホでチェックするだけ。
それが今の生徒会長。
勝手に付いたイメージが独り歩きし、尾びれ背びれが付いて今では生徒の間でこう広まっているのだとこの間亜睦に聞いた。
全員がそう思ってはいないだろうが大きなイメージは安易に壊さない方がいい、そして上に立つものの威厳の保ち方でもあると前会長を見ていて感じた。
だが本来俺は、ブラックコーヒーが苦手で甘いお菓子に目がなくて、子供が食べるような可愛いご飯が好きで、大声上げてばか笑いするしソファで寝ることもある。
筋トレも気が向いたらする程度で、本も好きだし、テレビだって普通に見る。お笑いも好きだ。
だからあの時……好きなものを作ると言われた時、イメージになさそうなことを言ったらどうなるのかと試したんだ。
「ま、あいつにこんなこと気にしても無駄だったな……」
ここに来て数ヶ月の玲音にイメージも何もないだろう。それに目の前で何度もケーキを食べているしテレビもお笑いも見ているしバカ笑いもした記憶がある。
今更壊れるイメージなんてなかったも同然。
「はっ……ほんと、あいつ意味分かんねぇな」
どうしてこの現状になっているのか思い出せないが、隠すこともイメージもどうでも良いなんて良く考えたらあり得ないんだ。じゃあ何かと簡単に言えば、どう思われようがどうでも良い相手、なんだろう。と言うか俺よりあいつの方がなにか大きなことをまだ隠してそうで、俺の隠し事を知っているのに不公平ではないか?そうなればやるべきことは一つ。
ここにいる間に絶対問い詰めて白状させてやる。
一番初め、教室で俺を見た時に呟いていた何かも気になるし、クソ真面目な見た目してるくせしてピアスガンガンに空いているし、白状させたら面白そうなことこの上ない。
まずは何からつついてやろうか……書斎にいるであろうカモを思い浮かべ、口が勝手に持ち上がる。そして久々に出来た面白いことに居ても経ってもいられなくなり、取り敢えず同じ場所に向かってみることにする。
何をするかは着いてから考えよう。柄にもなく、ワクワクした。
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