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第227話

2冊目に移ると制服姿が増え、写真の枚数も激減した。ここの幼稚舎に入ったのだろうことが予想でき、運動会や祭事なのだろう複数で写るものが増えていた。 こんなに幼い頃から親元を離れ暮らしていて、寂しくはなかったのだろうか? 両親は心配ではなかったのだろうか? 「あ、れ……?」 夏の写真なんだろうスイカを持って暑そうに頬を赤くし、でも楽しそうに笑っている2人がそこにはいて、同じように耳に髪の毛をかけ見えたそこには俺の耳にあるモノと――… 「よお。どうだ?ここの居心地は」 「あ……もうお昼ですか!?」 「いいや、まだだな」 コンコンと開けたままだった扉が音を鳴らし、顔を上げると正面に潤冬さんがいた。扉に寄りかかりどこぞの海外映画かと思う登場の仕方だった。 あんなにくしゃくしゃな顔して泣いていたのに。ゴールデンレトリーバーに怯えていたのに。 「ぷふっ……あ、やべ」 「あ?なんで今笑ったんだ?」 「いやっ、あの、そのですね……」 ずんずん近づいて来る鬼の形相に悪寒というか冷や汗がじわり、嫌な感じで全身に滲む。 アルバムを隠すわけにも弁解の余地もなく、あぁ?と詰め寄られ次にはお前!!と今度は焦って俺の手の下から本を取り上げた。 「中、見たのか!?」 「え、あ、はい」 「2冊共か?」 はい。 頷けば、ハァァ…と大きな溜め息を吐いて頭を抱えた。何かマズい物でもあったんだろうか?でも写っていたのは潤冬さん達だけで両親と思われる人はいなかったし、集合写真とか同じクラスだったんだろう友だちとの写真くらいしかなかった。 「見たらマズい物でもあったんですか?ハッ!もしかして……」 「犬が苦手なんじゃなくて!!」 「呪いの写真があったとか!!」 「は?」 「え?今なんて?」 タイミングよく声が被ってしまい良く聞き取れなかった。でもたぶん違う内容だ。 「いや、なんでもない」 「何でもありますよね!?なにがないんですか?」 「いや、だから、その……」 「なんですか?」 本当になんなんだ? 分からないで待っていると、だから!犬は苦手なんかじゃねえっつったんだよ!わかったか!! 潤冬さんは目いっぱい叫んできた。

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