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第233話
悪を制圧した俺は本当のヒーローとなり人気者でーーと言うところまで想像した。そして、気付いたら綺麗な体で脱衣所にいて、髪から雫が落ち、柔らかいタオルが肩にかかっていた。
良く分からないけど、この夏休みの間にタイムトラベルを使えるようになったみたいだ。
「まだぶっ飛んでんのか?時間ねえんだから体ぐらい拭け!」
「あ、潤冬さん!俺タイムトラベルしたんです!気付いたら体が綺麗になってて!」
「はいはい。後で聞くから服着ろ。客が待ってんだよ」
「マジで、絶対聞いて下さいよ!?」
「……はぁ。めんどくせえのがこっちにはもういるんだよ、ったく」
頭を拭いていたから良く聞き取れなかったけど、きっと俺のタイムトラベルを羨んでいるんだ。
仕方ないから連れて行ってやろう。時間の狭間に!!
抑えきれないニヤ付きのまま見上げていたら恐れ慄いていた。
「マジでもう疲れた……」
潤冬さんの疲れた発言を受け、今度は俺が頑張って、頭を拭いてドライヤーをしてやった!なんてったってスーパーマンレオンでもあるからな。
でもって今度はリビングで潤冬さんが迎えに行ったお客さんを待ってます。10分以上待たせた気もするけど俺はタイムトラベル出来るから実際そんなに経ってないと思う。
だって、タイムトラベルも出来るから。
「それにしても誰なんだろう?名前くらい言ってってもいいじゃん」
招いてもいないと言っていたのに玄関で盛り上がっているらしくなかなか戻ってこない。
気になって扉に四足歩行で近づく。だってか弱いバンビだから。
でもって覗こうノブに手をかけた途端、そこが大きく動き開いた。
「でいわあああっ!!」
「おわっ!なんだお前、いたのかよ!」
「わっ、は、はいっ!びっくり、して、その……その……」
「お、おうっ」
俺の態度に潤冬さんも動転しているようだった。
ペタッと床に尻もちを付き、肺の辺りを手で押さえてなんとか落ち着こうとする。
でもめちゃくちゃドキドキ心臓が動いてて、これ以上びっくりしたら止まりそうだった。
「れおちんの声だ!!ヤッホ――!!」
「バッ!そんなおおごえっ」
「ヒッッ!!」
「玲音!?」
「れおちん!?」
「あは、あははっ、だ、大丈夫ですっあはははっ」
これ以上のびっくりが思っていたよりも大きく早く来て受け止め切れず、思わぬ形に出てしまった。
笑い謝りながらぼろぼろ泣くという自分でも意味不明な形で。
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