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第235話
「れおちん、ほんと美味しそうに食べるね!」
「そうですか?」
「うん!雰囲気でもすっごい伝わってくるよ!」
雰囲気……?少し疑問に思った。
だけど美味しさでふわふわと飛んでいる頭ではそこまで変に感じず、もう一つ手を伸ばしたいと言う次の欲求に消えた。
今度は普通のカスタードがいいな。
鶴来先輩に聞いたらすぐわかるんだろうか……
「でもこの何か分からないのもいい!」
「僕はいやだ」
「え?」
「分からないのはいやだ。僕より分かるのもいやだ。僕だけが分かればいい。それでよかったじゃん。それなのにどうして……」
「つる――」
「亜睦」
俺が呼ぶ前にコーヒーを持って帰って来た潤冬さんが声をかけた。
お盆ごとテーブルにそれを置くと鶴来先輩に近寄る。俯いている彼の腰に手を回すと答えるように首に腕を回していた。
グッと体に力を入れているのが見えたかと思えば、そのまま彼を抱きかかえた。
潤冬さんは後ろを向いているし、肩に顔を置くように頭を押さえているから鶴来先輩の表情も伺えそうにない。
今度は俺が混乱する番だった。
「玲音、このこと、誰にも言うなよ」
「えっ、あ、はい」
「……暫く席を外す」
「はぁ、はい」
上手い返事が出来ず、しかも急によそよそしい話し方をする潤冬さんにどうしたんだろう。とそのことで頭はいっぱいになった。
さっき通ったばかりのリビングの扉をまた開き、2人は出て行ってしまう。
分からないけど、寝室に行ったんだなと謎めいた確信があった。
彼らに限ってそうなるとは思わないけど、ここではないどこかに籠るのだとしたら、それはきっと寝室だ。直感した。
いや、待てよ?
本望じゃないけど、俺とそれでこれがあるからもしかして……
でもでも!鶴来先輩には枦椋先輩がいて!!
ハッ!……いや、これはないか。鶴来先輩に限って、ないな。
枦椋先輩も好きだけど潤冬さんも好きになって悩んでるなんてことは……
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