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第238話

妄想からギュイッとシフトチェンジし、聞き耳を立てる。半信半疑だけどコップも用意した。 潤冬さんの寝室の扉にそっと当てて耳を付ける。何か話しているみたいだけど良く聞き取れない。 「―――、だろ」 「ん――や―――」 途切れとぎれだけど声はする。でも全然聞こえない。コップもあるのに。俺の知ってるBのLはもう少し会話が聞こえてナニしてるの!?と滾るところなのに。 これでは妄想のしようがなくて、ほんの少し扉を開けてみる。 中を覗くんじゃない。会話だけ。それでなにをしてるのかちょっと妄想したいだけ。 いや、本番をしているのならそれはそれでいいんだ。興味ある。ちょっと。ほんのちょっとだけ興味ある。いっぱいじゃないから勘違いしないで欲しい。ほんのちょっと、生で熱い夜を過ごす2人を見たいだけ。 だって、気になる。自称なんでも食べる腐男子だから。 電気を消している可能性を考え開いているか分からない、締めが甘くカチャっと行かなかった扉のように少しだけズラした。 「だから、―が――って」 「のは、わ―――で……」 おおお!さっきより良く聞こえる! でも想像していた雰囲気がなくてちょっと凹む。 現実は厳しいから仕方ないか。期待無しにもう少し何を話しているか聞いてみる。 だって、さっきの鶴来先輩の態度も気になったから。 あんなに低いテンションの先輩、初めて見たし。大翔の言ってこと、本当だったんだなとしみじみ思い出していた。 「――は、してないっ」 「い―――ら、ぬげ」 「だから―――」 えっ、えっ!? なんか分かんないけど俺を待ってたのかと言うような急展開。 待っていたそれが始まりそうな会話が聞こえて来た。 「んっ!―――だって!」 「おいっ!今日は―――!」 なんか、揉めてる? 今日はって言葉が聞こえたけど、なんだろう?前にも何かあったの? んん――!よく聞こえないよおお!! 必死に耳を隙間に押し当てて神経を集中させる。 「今日はヤダって!!」 直後、叫び声が聞こえ、と思えば扉が勢いよく動いたんだ。 俺に向かって。

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