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第241話

いたのかよ。 声を掛けると今にも飛びあがり泣きそうな顔をしていて、やべぇなと直感した。 だが更に面倒なことにこっちには亜睦もいて……やべぇやべぇと思っていれば奴らは速攻でぶつかり、予想通り玲音はビクつきボロボロと泣いた。 とは言え、本当にそうなると思ってはいなかったので焦った。 どうしたものか。辺りを見回しティッシュが目に入り、拭くものと慌てて取りに行く。 波瀾の一幕を終え、亜睦をどうするか座りながら考えようとしていたらあのドーナツ発言だった。 これは良い。提案に乗じてコーヒーを淹れつつ竹ノ原に報告に行こう。でもって早めに引き取りに来てもらおう。2人を置いてキッチンに向かう。 先ずは竹ノ原に捕まえたから迎えに来いと報告と催促し、月極には分かったとだけ送る。 最初に頼ったのが竹ノ原ならば、迎えもこっちがいいだろう。月極には悪いがそう判断した。 竹ノ原から直ぐに返事が来た。 用事が終わり次第そちらに向かう。夕日が沈む前には行けると思う。 それまではここに置け。と言うことなんだろう。 仕方ないか。 玲音にも気を許していそうだからまぁ、なんとかなるか? 丁度出来たコーヒーを注ぎリビングに向かえばドーナツにかぶり付く玲音が目に入る。 美味そうに食うな。程度に見ながら近寄ると面倒その2はそれどころではなかった。 「……のもいやだ。僕だけが分かればいい。それでよかったじゃん。それなのにどうして……」 「亜睦」 名前を呼び背中に手を回すと大人しく体を預けて来る。 いつも思う。背丈の似ている俺を重ねているのだろうかと。 「どうして、どうして、あやち……」 この距離でないと聞こえない小さな声で何度も繰り返し呟いていた。 言わないと思うが念の為に玲音に釘を刺し寝室に向かう。道具はそこにしかないのだ。 「どうして……」 「亜睦、何がどうしてなんだ?」 歩きながら少しでも話を聞こうとするがさっきの言葉を最後に話さなくなった。 何がどうしてなのか。どう声をかければいいのか。 俺には分からない正解を、お前なら分かるんだろう。ハル? 落ち着くまで取り敢えず待つか。 今日は長くなりそうだと小さく覚悟し、カチャと寝室の扉を開けた。

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